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第4話

ドン!

私の瞳孔が一瞬で縮んだ。霧島晴をまっすぐに見つめる。

彼女は眉を上げ、何かに気付いたような表情を浮かべた。

「本当に知らないの?

あはは、城井杏、あなたってほんと馬鹿ね。一度も陸橋に聞かなかったの?なぜ家に連れて帰ったのかって」

どうしてそんなに平然としていられるの?少しも気になんないの?」

問わなかったはずがない。陸橋の成人式の日、お酒の勢いを借りて聞いた。

その時、彼は数秒躊躇った後、私の目尻に触れた。

「初めて会った時、お前の目の死んだような光に惹かれた。枯れかけた花を生き返らせたいと思った。お前が咲き誇る姿が見たくてな。今はこうして生き返って、手にしていたあのバラのように、眩しいほど輝いている。杏、俺がお前を連れ帰ったのは、ただそれだけだ」

ただそれだけ?

本当に、ただそれだけなの?

私は初めて、じっくりと霧島晴の顔を観察した。

特に目が......本当によく似ている。

そうか。私が生かされたのも、結局は霧島晴のおかげ。

私が受けた寵愛も、全て霧島晴がいたから。

陸橋も深水も、私を霧島晴の代わりとしか見ていなかった。

そう考えると、全ての変化が納得できる。

本物が戻って来たのだから、偽物の私はもう必要ない。

私は悟ったように微笑んだ。これでいい。これなら私が去っても、後ろ髪を引かれることはない。

結局、この数年は取引でしかなかったのだから。

彼らは私から霧島晴を失った慰めを得て、私は彼らによって新しい人生を生きた。

過去の全てを、昨日の死者のように葬ろう。

私は半月間入院した。その間、陸橋は時々顔を見せたが、少し座っているだけですぐに帰って行った。

深水は一度も来なかった。

でも毎日、彼の予定を知らされた。霧島晴と旅行に出かけたのだ。陸橋も半月分の仕事を片付け、やっと時間を作って二人の後を追った。

また携帯が鳴った。霧島晴からのメッセージを見ても、心は不思議なほど平静だった。

写真には、深水と陸橋が騎士のように彼女の両側に立ち、彼女は守られる姫のように、中央の椅子に凛として座っていた。

大正時代を思わせるような写真で、霧島晴には上品な静けさが漂い、眼差しも柔らかだった。

こうして見ると、私と彼女はより一層似ているように思えた。

以前、陸橋は私の静かな佇まいが好きだと言っていた。そういう意味だっ
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