第59話

彼は、クリーム色のカジュアルスーツを着ていて、身長が高く、温和な雰囲気が漂っていた。

彼は軽く笑って言った。「友達が入院しているので、ちょっと見舞いに来たんだ」

「ああ」

「君は、なぜ一人で病院に来たの？」

私は手に持っている検査票を上げて言った。「健康診断の結果を受け取りに来たんだ」

山田時雄は真剣な表情で言った。「問題ないよね？」

「ないよ」

私は前で会社の健康診断を受けたばかりで、今回も前回と同じで、すべての項目が正常範囲内だった。

ただお腹には赤ちゃんがいるだけだった。

山田時雄は頷いて言った。「まだ食事をしてないだろう。一緒に？」

「伊賀丹生と河崎来依もいるよ」

疑いを避けるのためか、彼はまたそう言った。

お腹をさすってみると、確かに少し腹減った。「いいよ」

一人で帰ると何を食べるかわからないし。

しかも人が多いと、そんなに煩わしいことを考える余裕もなくなった。

山田時雄は助手に車を預けて帰って、私の車に乗って彼らが予約したレストランに行った。

それは羊のスープを販売する古いレストランだった。

店は控えめで、路地の隅に位置しているが、非常に盛り上がっていた。

多くの車が路地口に停まっていて、渋滞していた。

私たちは車を外に停めて中に入った。伊賀丹生と河崎来依はもう到着していた。

私を見て、河崎来依は喜んで、言った。「どうして来たの？今夜は忙しいと思っていたよ」

「うん、ちょうど山田先輩に会った」

河崎来依は鋭い目つきで、私の耳元に寄り添って小声で尋ねた。「成功しなかったの？」

「彼に話す機会も与えてくれなかった」

「どうしたの？」

「江川アナが妊娠したんだ」

「？？？彼女も妊娠したの？」

河崎来依は元々声が低かったが、今回は抑えきれずに驚いた声を上げ、伊賀丹生と山田時雄は一斉にこちらを見た。

河崎来依は再び伊賀丹生に怒りを向けて言った。「何を見ているんだ。男はみんな同じだ」

「どうしたんだ、また何かあったのか？」

伊賀丹生は泣くに泣けず笑うに笑えずだった。

河崎来依が私の手を押さえ、直に伊賀丹生に聞いた。「江川アナが妊娠していることを知っているのか？」

「江川アナ？妊娠してる？？？」

伊賀丹生はもっと驚いた顔をして、落ち着いた後に、「知らないよ！」と言った。

「今日は食事を約束したけど、江