第63話

「気にしないで、笑わないよ」

彼の肩を軽く叩き、笑顔で話題を変えた。「お前もマサキが好きなんだね、前に言ってなかったよね」

山田時雄はステージを見つめ、声が悲しげになった。「屋烏の愛だけだ」

「彼女は好きなの？」

「うん、大学の頃は彼女がとても好きだったよ」

「偶然だね」

私は微笑んだ。「私も大学の頃はマサキの歌が好きだったんだよ」

彼は口角を上げ、少し意味深い感じだった。「確かに偶然だね」

私たちはVIP席にいて、位置は最高で、全体を見渡せるようだった。

おなじみのイントロと共に、歌手がステージに現れ、瞬時に会場の雰囲気を盛り上げ、無数のファンが叫び、合唱した。

私と山田時雄は、ただ静かに聞いているだけの2人の異種だった。

過去数年間の1コマ1コマは、映画を見るように頭の中で切り替わり続けた。

10年前

あなたを知らなかった

あなたは私のものではなかった

私たちはまだ同じで

見知らぬ人のそばにいた

徐々に馴染んだ街を歩いていた

10年後

私たちは友達だった

まだ挨拶できる

ただそのような優しさ

もう抱きしめる理由を見つけられなかった

恋人は最後には友達になる運命だった

……

最後の歌詞を聞いて、突然涙が雨のように流れ出した

声を立てずに長い間泣いた後、ティッシュを取ろうとすると、ティッシュが手渡された

山田時雄の瞳には抑制が見えた。「泣き終わったら、振り返るのか？」

「それはないよ」

顔の涙痕を拭いて、彼の我慢する様子を見て、思わず助言した。「泣きたいなら泣いていいよ。私みたいに、泣き終わったらこの壁を乗り越えられるかもしれない。彼らには言わないから」

彼はからかって軽く笑った。「誰が言った。私がこの壁を乗り越えたいと思っていると？」

「なに？」

私は驚いて彼を見つめながら言った。「まだあの女の子を追い求めるつもりなの？」

彼は堂々と認めた。「うん」

「河崎来依がいつも先輩を褒めているのもわかるよ。本当に忠実だからね。早く追い求めいぇみてよ。私たちは結婚式を楽しみにしているんだから」

大学から今まで。

それは江川宏への私の好意に匹敵するものだった。

ただし、彼にはまだその女の子と進展する機会があった。

そして私と江川宏が離婚すれば、おそらく友達でも難しいだろう。

8年間の好意は、見知らぬ