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第46話

引っ越し?

呼吸が一瞬止まってしまった。

心の乱れも落ち着けなかった。

私は深呼吸をした。

「ここに引っ越す?私は同意していないよ」

「おじいちゃんは言ったよ。南は彼のために、離婚のことを当面の間先送りにしたって」

彼は無理やりに携帯電話を私に渡した。

「嫌なら南がおじいちゃんに言うよ」

「ずる賢いやつ」

彼をつい睨みつけてしまった。

「離婚を先送りにすることに同意するだけだよ。引っ越しを許可したわけじゃない」

いくら何でも江川グループの社長なのに、こんな手口を使うとは。

言っても誰も信じてくれないだろう。

「夫婦が一緒に住むのは当然だ」

彼は何も思わないようだった。

「屁理屈だよ」

私は一言罵った後、家のドアを開けた。

彼も遠慮せずに私について入ってきた。

今夜お爺さんが教えてくれたことを思い出すと、宏に対して少し同情を抱かずにはいられなかった。そのため、彼を強制的に追い払うこともしなかった。

ただ指で、寝室の向かいにある部屋を指さした。

「あなたはその部屋を使って」

「うん、いいよ」

彼は何も強要しなかった。穏やかに同意し、スーツケースを持ち込んだ。

私は自分で冷たい水を注いで飲んだ。コップを置いて振り返ると、広くて暖かい胸にぶつかった。

懐かしくて慣れ親しんだ雰囲気だった。

しかし、私は素早く後ろに下がり、慌てて言った。

「また何か」

まるで夫婦ではなく、見知らぬ人のようだった。

しかし、そうしないと、再び彼を好きになってしまう気がした。

そうすることで、いつも自分に言い聞かせていた。南、彼が好きなのはあなたじゃないと。

彼も少し寂しそうに見えた。薄い唇をかんで口を開いた。

「顔は少し良くなったかと聞きたいだけだ」

「わからない」

適当に答えた。

一晩中、鏡を見る余裕すらなかった。

彼が聞かなかったら、このことを忘れるところだった。

彼は手を上げた。

「見せて」

「大丈夫」

無意識に彼の動きを避けた。

「自分で処理するよ」

「南、俺たちは、そんなに疎遠になったの?」

彼は眉をひそめた。

「疎遠じゃない」

彼とアナが警察署で親密にしているのを思い出し、彼の袖に目を落として淡々と言った。

「ただ汚いから嫌なだけだ」

彼を愛しているのは間違いない。

ただし、私が愛しているの
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