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第45話

「おじいちゃんが頑固じゃなかったら、宏もこんな腹立つ思いをしなくてもよかったのに」

……

その話を聞いた来依は白目を向いた。私が引っ張っていなかったら、また戻って喧嘩するところだった。

いつの間にか雨が降り出し、秋風も冷たく吹いた。気温が急に下がり、人々が首を縮めたくなるほど寒くなった。

車に乗ったら、来依は怒って言った。

「なんで私を引っ張ったんだ!彼女の言ったことを聞いてなかったのか?くそ、なんてバカな人!人類が進化した時、彼女は忘れられただろ!」

「聞いたよ」

私は苦笑しながら、ゆっくりと車を走らせた。

「宏は気まぐれな人だから、彼が考えを変える前に、早く離れたいんだ」

アナのことを気にする必要はなかった。

「怒らないの?」

彼女が尋ねた。

「まあ…」

怒っているというよりは、慣れてしまったと言った方がいいかも。

鹿児島の夜の生活が始まった。道路は人でごった返していた。

途中渋滞が多かった。

来依は突然笑顔になり、私に寄ってきた。目をパチパチさせながら聞いた。

「気持ちいいだろう?」

「何が?」

「彼女の車があんなにぼろぼろになっているのを見て、気持ちいいだろう?」

「……」

考えた後、心の中の暗い考えを否定しなかった。

「気持ちいいね」

アナがまったく同じ車を私の車の隣に停めたときから、私はずっと我慢していた。

それは車だけじゃなかった。

というより、主権を宣言しているようだった。

警察署の前にその車がぼろぼろになったのを見たとき、私は来依が心配してたから、喜ぶ余裕もなかった。

しかし、今思い返すと、すっきりとした気持ちで深呼吸できた。

「それでいいよ」

来依は満足そうに眉をひそめた。

私は思わず笑ってしまった。

「でももうあんなに衝動的にはしないでね」

「わかったよ」

「ごまかさないでよ」

「ごまかしてないよ、南の話を一番よく聞いている」

「……」

私は彼女にはどうしようもなかった。彼女を家の下まで送ってから、そっと言った。

「来依、本当にもう衝動的にはしないでね。今日は宏が我慢してくれたけど、もしアナのために来依に責任を取って欲しいと言ったらどうするの?」

「私もバカじゃないよ」

来依はずる賢そうに笑って言った。「まだ伊賀がいるじゃない?」

彼女と伊賀丹生のことをすっかり忘れ
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