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第299話

確かに、現実はそうだった。

私が江川宏と結婚したとき、婚約パーティーはなかったし、結婚式すらもお爺さんが取り仕切った。

彼はいやいや出席しただけだ。

それに彼は公開したくないと言っていたから、こんなに盛大でもなかった。

結婚式に来たのは、江川家の人々と双方の親しい友人だけだった。

まるで食事会のように簡素だった。

結婚から離婚まで、外の人は彼が妻を大切にしていることしか知らなかったが、彼の妻が何という名前か、知っている人はほとんどいなかった。

私は感情を抑え、視線を戻すと、江川宏が一着のオーダーメイドの燕尾服を着て、冷ややかな表情で堂々と現れたのが目に入った。

彼の腕を組んでいるのは、私のデザインしたドレスを着た藤原星華だった。

美男美女、ドレスは光り輝き、現れるや否や多くの賓客の視線を引きつけた。

多くの人が接近して親しくしようとした。

しかし藤原星華は私の方に歩いてきた。まさに奥様の態度で言った。「清水さん、今日お前を呼んだのは、ドレスに急な問題が起きないかと心配だっただけで、気分を害してないでしょうね?」

河崎来依が冷淡に警告した。「藤原星華、自分の大事な日にわざわざ不愉快になることはしない方がいい」

彼女は仕事では人当たりが良いが、私生活では、決して誰かに苛められるような人間ではなかった。

「人が私を苛めない限り、私は人を苛めない。だが、人が私を苛めれば、私はその人の先祖までを罵る」という信条だった

藤原星華は冷ややかに言った。「お前に話しかけたっけ?」

「私は気分がいいよ」

私は河崎来依を軽く引っ張り、藤原星華をじっと見つめた。「お二人の新婚をお祝いします」

もう、私のような取るに足らない元妻に目を向けないでほしいんだ。

私はもうこのくだらないことに巻き込まれたくないんだ。

今日の婚約パーティーが無事に終われば、すべてに終止符を打てるだろう。

私は全く江川宏に視線を向けることはなかった。

見たくもなかったし、見る勇気もなかった。

藤原星華は一瞬驚いた。「そうか、清水さん、意外とあっさりしてるんだね」

彼女は江川宏の腕を揺らして言った。「宏兄さん、あなたたち、もしかしてただの契約結婚だったんじゃない?お互いに全く感情がなかったとか。清水さんが好きなのは、別の人なんじゃない?」

江川宏は笑い話を聞いたように彼女
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