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第282話

さらに江川アナと江川文仁のあのスキャンダルがあったため、江川宏が少しでも油断すれば、無数の人がこの機会に乗って彼を叩き落とそうとするだろう。

藤原おばあさんが彼にいくつか言ったとしても、江川宏はただ耐えるしかないはずだ。

しかし、彼は全く動揺することなく、感情が読み取れない表情で、静かに言った。「ふさわしくないかどうか、いずれ証明してみせます」

「おばあさん~」

藤原星華はそれを聞いて嬉しそうに顔を輝かせた。「ねえ、これを聞いてもまだ満足しないの......」

「お前に対しては、十分にふさわしいわ。証明する必要もない」

藤原おばあさんは端正に座り、優雅な態度を崩さなかった。「お前とお前のお母さんが満足していれば、それでいいのよ」

前の一言は反対していたのに、今は何の躊躇もなく同意した。

藤原星華は困惑して聞き返した。「どういう意味......」

「奈子の夫になるなら、彼はまだまだ不十分よ!」

藤原おばあさんは彼女をまっすぐ見つめた。「お前にとっては、彼は十分すぎるくらいだ」

声の調子は穏やかで、軽蔑の色もなかった。

しかし、それはまるで大きなビンタのように、相手に衝撃を与えるものだった。

「いつだって私が彼女にかなわないと思ってるんだ!こんなおばあさんなんて、ないよ!」

江川宏の前で恥をかかされた藤原星華は、顔を真っ赤にして立ち上がり、そのまま走り出し、自分の庭の方へ向かった。

怒りのあまり、江川宏の存在すら忘れてしまった。

江川宏の黒い瞳が、何の隠しもなく私の方をじっと見つめ、目には複雑な感情が見えたが、藤原おばあさんの前では、結局何も言わなかった。

藤原おばあさんは私の手を優しく叩いた。「南、まずは朝食を食べてきなさい。廊下を出て右に曲がればダイニングがあるわ。場所が分からなかったら、使用人に聞いてみてね」

「はい」

おばあさんは江川宏と二人きりで話したいようだった。

私は江川宏の視線に気づかないふりをして、そのまま外へ歩き出した。

窓際を通り過ぎると、微かに声が聞こえてきた。

「もう他に誰もいないわね、江川社長、正直に話してもらえるか?彼女と結婚することで、藤原家に何を望んでいるの?」

私は無意識に足を止めた。

利益の交換、互いに必要なものを求めているのだろうと思っていた。

だが、その人は落ち着いた声でこう答え
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