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第214話

「そう、試してみたい」

「南ならできる」

彼は私を見つめ、確信する口調で言った。

私は心から嬉しくなり、心から感謝の気持ちを込めて言った。「先輩、今回本当に本当にありがとう!」

彼はたださらりと話したが、私は想像できた。南希を取り戻すために、彼がどれだけの力を費やしたのか。

山田時雄は少し困ったように微笑んだ。「何を感謝するんだ?実は南の両親の会社も一緒に取り戻そうと思ったんだけど、相手が手放さなかったんだ」

「これでも十分だよ」

私は真剣に言った。「南希さえあれば、それで十分だ」

「南の役に立てて良かった」

彼はホッとしたように息をつき、玄関に向かってドアを開け、外を一瞥して眉をひそめた。そして私に向かって言った。「南、雑巾ある?」

「どうしたの?」

「清掃のおばさんが少しきれいにしてない部分があるんだ。もう一度拭いておくよ」

山田時雄は穏やかな声で言った。「何しろ血だから、南が見て怖がらないように」

「大丈夫だよ」

私は資料をファイルに戻し、テーブルの上に置いた。「もう引っ越すつもりだから、気にしないで」

海絵マンションのこの家は、離婚協議で明確に私に分けられた財産だったが。

でも、江川宏に絡むと、問題が次々と湧いてくるだろう。

今日は藤原星華だけど、明日には江川アナや江川温子......誰が来ても、ここに住む理由を問い詰められるし、もしかしたら家に押し入ってめちゃくちゃにされるかも。

引っ越さないと、自らトラブルを招くことになるかも。

山田時雄は穏やかに微笑んだ。「もう場所は決めたの?」

「いや、さっき引っ越しを決めたばかりだ」

私は頭を振った。「明日から部屋を見に行って借りるつもり。それに、この家も売るんだ」

この家を売ったお金が、南希再建の最初の資金になる。

山田時雄は私の隣に来て、少し考えてから言った。「良い場所があるんだ、考えてみるかい?空いている家で、ずっと貸し出そうと思ってたんだけど、借り手が見つからなかった。ここからも遠くないし、引っ越しや会社の再編成にも便利だと思う」

「本当?」

「本当さ」

山田時雄は笑った。「明日、家を見に行く?」

「見なくてもいいよ」

私は笑顔で言った。「先輩の言う良い場所なら、それで間違いない。だけど、先に言っておくけど、ちゃんと家賃は払うよ。もともと価額で貸してよ
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