第165話

江川アナは私を一瞥した。「都合がいいけど、母はずっと宏を待ってるわ。ただし、南は最初に入らない方がいいんだ。医者が言ったとおり、母は長い間昏睡状態で、記憶も混乱している。慣れ親しんだ人だけを最初に会う方が、体と神経の回復に影響を与えないでしょう」

その言葉を聞くと、私が入るだけで、まるで重罪人のようだった。

私もそんなに無神経ではなかった。江川宏を見つめながら言った。「あなたが入って、私は先に行くわ」

「そうならば、」

江川宏は冷たい目で江川アナを見つめ、私の肩に腕を回した。「それでは、温子叔母さんが数日休養してからまた来る」

私は驚いて彼を一瞥し、彼の手を払いのけようと思ったが、彼はまるで気づかず、微動だにしなかった。

「宏……」

江川アナは顔色が困惑し、目を赤くして言った。「昨日、私を追い出したのはいいが、こんな時にまで……」

「アナ、やめなさい」

病室からは弱々しい女性の声が聞こえてきた。「宏と清水さんを早く入れて」

江川アナはその話に沿って、不本意に言った。「入ってきて」

江川温子は昏睡している間に、トップクラスの医療チームによる看護を受けているため、状況は確かに良好だった。

江川宏が入ってくると、彼女は江川宏の手を握り、涙が止まらなかった。

真実を早く知っていなかったら、彼女の母性愛に感動してしまうかもしれなかった。

「無事でよかった。あなたが無事なら、私が昏睡していたこれらの年は無駄ではなかった……

「宏、アナから聞いたわ。あなたは結婚しているけど、おじいさんは彼女を嫁にするのを許さない……

「ああ、私がまたこんなことを言っているか、清水さん、気にしないで。彼ら二人は昔から仲が良かったので、私はただ惜しいと思っただけだ」

私は微笑んで言った。「私は何を気にするか、あなたの娘のおかげで、私と江川宏はすぐに離婚するよ」

このことは、江川アナが私たちが来る前に彼女に話したに違いないんだ。

しかし、彼女はアカデミー賞の主演女優賞を受賞することができないのは惜しいと思ったわ。最初は驚き、次に怒り、最後に私を見て謝った。「清水さん、アナとは気にしないで。彼女は子供っぽい性格で、一度決めたことは絶対に手放さない。宏も彼女を甘やかすのに慣れていた……」

演技は上手くて豊富だった。

でも、江川アナが間違っていることを認めなかった。