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第144話

「彼女じゃないなら、まさか私なのか?」

彼の視線に向かって、私は決して退かず、一文字ずつ、問いかけた。

期待はないと言っても嘘だった。

誰にも隠せるけど、自分の心を欺けないんだ。まだ諦めていないんだ。

私は彼とはもう進むことはできないことをよく理解していたが、ここ数年、彼が私を少しでも好きだったことを望んだ。たとえそれが非常に短い瞬間であっても。

8年間、人生には何回の8年があるのだろうか。

彼の黒い瞳は渦のようで、人を吸い込もうとしているようで、声も心を惑わす力を持っていた。「もし私がそう言ったら、私たちは離婚しないで、いい?」

私は彼を見つめて、しばらく呆然として、頑張って冷静に彼に首を振った。

「江川宏、もし私のことを好きだったなら、それは私がこれまでの何年も完全の片思いだったわけではないことを証明するだけで、私も少しは納得できるかもしれない。しかし…これは私たちが続ける理由ではない」

「これまでの何年?」

「そう、何年だ」

突然、私はこの感情を完全にさらけ出し、もう隠さないで、笑って言った。「8年間、江川宏、私は大学に入った時からお前が好きだった。8年間ずっと好きだった」

全部言ってしまえば、もう何の後悔も残らないかもしれなかった。

彼に堂々と言って、私は彼が好きだったことを、恥ずかしくなかった。

「どうして……」

江川宏の目には驚きと喜びと疑問が浮かんだ。「お前たは大学で、山田時雄が好きじゃなかったの?」

私は深呼吸して、心の中の苦い感情を押し隠した。「誰が言ったの?それとも、お前は少し仲が良い男女の間には全て恋愛があると思うの?」

「それなら……」

「忘れたの?先日、私の8周年を祝ってくれたじゃない?」

私は無理に口角を上げて笑ったが、あまりかわいくない笑顔で、自分自身に言い聞かせた。「あの日、学校の保健室で目を覚ました時、お前を見た瞬間から好きだった。病院に連れて行ってくれてありがとう、そしてたくさんの食事をごちそうしてくれてありがとうと思った」

「南……」

江川宏は私の視線を避け、身体を揺らし、喉を鳴らした。「お前は私のことが好きなのは、このことだけ……?」

なぜか、彼の中に混乱を見たような気がした。

私は手のひらをつねり、軽い口調で言った。「おそらく、お前にとってはたやすいことで、すっかり忘れてしまった
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