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第10話

続いて、周囲から一斉に息を呑む音が聞こえた。

「うわっ!カプの完璧な人選ってやつか!」

「私の頭にはすでに120万字の小説が浮かんでるぞ」

「こいつ誰だよ?国内のエンタメ界にこんな美人がいたのか?」

「もういい、俺はここで推し変える!この妖狐を推すことに決めた!」

ざわめきがどんどん大きくなって、ついには青柳花子のために来た代行カメラマンたちまでもが、私を撮影し始めた。

私の周りには次第に人が集まりすぎて、ついに警備員が出てきて場を収めることになった。

その時、人混みの中で雪子の姿を見つけた。彼女は不器用に人混みを掻き分けて、手には「花子さんクランクアップおめでとう」のプレートを掲げていた。

私に気づいた彼女は目を輝かせて、肥満気味の体を揺らしながら、私に近づこうと必死だった。「あなた、誰?名前は?新人なの?ファンクラブはあるの?」

私は彼女を見つめながら、これ以上ないほどの皮肉を感じていた。もし彼女が目の前の女が自分の母親だと知ったら、どう思うだろうか。

だが彼女が普段見ているのは、私の悪意のある加工写真ばかりだ。おそらく私だと気づくことはないだろう。

雪子はサインを求めて私に近づこうと必死だったが、ついにほかのファンたちに罵られて、口論になってしまった。

彼女はとうとう殴り合いの末、土の中に転げ落ちた。結局、警備員によって助け出された。

その時青柳花子は騒ぎを聞いて駆けつけた。

自分のファンたちが私の周りに群がって、サインを求めているのを見て、顔を真っ赤にし、息を荒げた。

「新人のくせに何て規則を知らないんだ。みんな集中して撮影してるのに、お前のせいで現場が混乱して、ドラマの進行に影響が出たらどうするつもりだ?」

最初の一言で、私に「わがままな新人」というレッテルを貼ろうとしていた。

もし彼女の思惑通りになれば、私のようなデビューしたばかりの新人はたちまち業界から干されてしまうだろう。

私は彼女の得意げな目を見つめて、唇をわずかに上げた。

「申し訳ありません、青柳さん。私はただの小さな俳優で、演技をして生計を立てているだけです。少しでもご迷惑なら、今すぐ退場しますので、どうかお怒りにならないでください」

私の卑屈で謙虚な言葉に、周囲のファンたちはすぐに怒り狂った。

「お前、クランクアップのパーティーで半分の会場を占めて、
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