第55話  

「ええ、どこまで話しましたかな、ああ、第31条のここ…」

20分後、弁護士は書類を整理し、きちんとフォルダに収めた。

「山口社長、それでは先に失礼しますね」

「うん」 弁護士は立ち上がり、ドアの近くに寄ると、後ろから山口清次の声が聞こえた。

「由佳と話なくてもいい。私が彼女に伝える」

「わかりました。ありがとうございます」 弁護士はオフィスを出た。

しばらくして、オフィスの外からノックする音が聞こえた。

由佳は仕事に没頭しており、顔を上げることなく言った。「入って」

足音が近づいてきた。

「何か用？」

久しぶりに聞く声に、由佳が顔を上げると、そこには山口清次が自分のデスクを見つめて立っていた。

由佳は一瞬驚き、立ち上がって言った。「山口社長、どうしてここに？」

山口清次は彼女を見つめながら言った。「弁護士の代わりに伝える。警察署で事情聴取して」

「ああ、分かった、仕事が終わったら行く。山口社長、他に用事は？」

「こんなことがあったんだ、なぜ私に言わない？」

由佳はゆっくりと顔を上げ、彼を見つめて言った。「大したことではない、言うほどのことではない」

「由佳！」

「何だ？」

山口清次は言った。「私は気にかけて、なぜそんなに距離を置くのか？」

「昨夜、あなたは加波歩美と黙って出て行った、一晩中私に電話したことがなかった。メッセージもなかった。今、私はもう大丈夫だ、あなたの気遣いにも何の意味があるのか？」

彼女は山口清次にとってただのペットであり、暇なときに思い出すだけだった。

由佳は、森由美子が尋ねた山口清次はおそらくたくさんのお金を使ってくれると思い出した。

彼女は突然答えを見つけた、3年間、2,000万、2軒の別荘、多すぎるほどか？

3年間働けば一生お金を心配することはない。

山口清次は黙ったままだった。

オフィス内は沈黙に包まれた。

山口清次は襟を整えると、ソファに座って言った。「ごめん。昨夜、怪我はないか？」

由佳は首を振った。「ない」

山口清次は無意識に言い訳をした。「昨日、加波歩美が突然病気...」 言いかけて、突然口ごもったまま止まってしまった。

由佳の目が動いた、彼女は以前家で見た加波歩美のカルテを思い出した。

加波歩美に何か病気があるのだろ