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第490話

林特別補佐員は数秒間躊躇した後、報告を続けた。「グループは今年、雪見市にいくつかのテーマパークを投資する予定です。初期の計画を進めたところ、中村家族もその土地の交渉に関わっているようです」

「他に何かあるか?なければ、戻っていい」

「では、これで失礼します」林特別補佐員は書類を持ち、素早く部屋を出ていった。

清次は立ち上がり、窓辺に歩み寄り、恵里に電話をかけた。指示を出し終えると、彼は携帯をポケットにしまい、遠くを見つめた。目には、深遠な表情が浮かんでいた。

彼は信じていなかった。そんなことが起きれば、由佳が颯太を好きでいられるはずがない!

しばらくその場に立ち止まった後、清次は上着を手に取り、病室を後にした。数歩進んだところで、背後から声が聞こえた。

「おい、清次?」

清次は足を止めて振り返った。「先生」

「君のカルテを確認したが、今なら手術が可能だ。いつ手術を予定したい?」と張医師が尋ねた。

「手術はやめて、今回は保存療法に切り替えることにしました」清次は答えた。

彼は当初、手術を受けるつもりだった。しかし、由佳と颯太が突然付き合い始めたことを知り、考えを変えた。

もし手術を受けて病院で2週間も寝込んでいる間に、由佳と颯太が何か進展を遂げたらどうする?

医師は驚いたが、すぐに「まあ、それも一つの方法だね。君はまだ若いし、胃を切るのはやはり体に負担が大きい」と言った。

清次は病院から星河湾の別荘へ戻ったが、由佳はすでに逃げていた。

彼女は逃げただけでなく、清次にメモまで残していた。「私が大人しく囚われるとでも思ったの?バカ!」と書かれたその紙には、丸い卵の絵も描かれていた。

由佳がその卵を描きながら得意げにしていた表情を思い浮かべ、清次の目に一瞬笑みが浮かんだ。しかし、すぐに彼女が颯太と一緒に温泉に行こうとしていることを思い出し、瞬く間に表情が陰り、顔は暗雲に覆われたようになった。

その頃、由佳は自宅のベッドで、いくつかの写真コースの卒業生の作品や評価を調べていた。

北田から返信が来た。「由佳、君の作品をざっと見たよ」

北田は写真を見た感想を述べ、最後に「僕の意見としては、君は人と自然をテーマにしたコースを選ぶと良いと思う。君の写真は人と自然の風景を見事に融合させていて、お互いを引き立て合っている。特に君の姪っ子が写っている作品
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