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第32話  

由佳は再び寝室に戻って昼寝をした。

午後3時過ぎ、山口清次は疲れた様子で帰宅し、真っ直ぐキッチンに行き水を一杯注いだ。ふとキッチンの隅にある贈り物の山を見て、「おばさん、今日は誰か来たのか?」と尋ねた。

おばさんは正直に答えた。「奥様の友達がいらっしゃいました。」

おばさんは言葉を詰まらせた。

山口清次は彼女を見て、「それで?」と言った。

「奥様にその友達の前では自分をお嬢様と呼ぶように言われました。」

山口清次は眉をひそめ、「そのの友達は男か?」

「はい。」

山口清次は何かを察した。今日来た友達は由佳の好きな人なのだろう。

その人の前で未婚のふりをするということは、由佳は確かにその人にかなり好意を抱いているんだろう。自分が再婚者であることを知られるのが怖いのだろう。

山口清次は水の入ったコップを握りしめ、一口水を飲んでからまた尋ねた。「その男はどうだ?見た目は。」

「テレビに出ている芸能人のような方でした。」

おばさんは新しいドラマをあまり見ないので、吉村总峰の顔が見覚えあるものの、名前は思い出せなかった。

芸能人。

山口清次は思い出した。以前撮影スタジオの入口で見た人は、帽子にマスクをして、まさに芸能人のようだった。

やはり由佳の好きな人だ。

山口清次は水を飲み、水の入ったコップを置いて階段を上がった。

由佳はちょうど目が覚めたばかりで、ベッドに横たわりながら動くのが面倒に感じていた。

彼女は天井を見つめてぼんやりしていたが、突然ドアの外の足音に気付き、ドアの方を見ると、山口清次がドアを開けて入ってきた。

もし昨日のこの時間なら、山口清次が帰ってきたことを由佳は非常に喜んだだろう。

しかし今、由佳は待ちくたびれていて、山口清次の帰宅に特別な感情はなく、むしろ終わりを感じていた。

このタイミングで帰ってきたということは、明日一緒に離婚届を渡すためだろう。

彼はもう待ちきれないのだろう。

「目が覚めたか?」山口清次は近づいてきて、ベッドの端に座った。

由佳は「うん。」と言ってベッドから起き上がり、彼に二日連続帰ってこなかった理由を尋ねようとした。

だが、口を開けた瞬間、山口清次の服が少し乱れているのに気付いた。特にシャツには多くのシワがあり、襟の部分にはかすかな口紅が
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