第248話

貴行が個室のドアを開けて、中に清次一人だけを見た時、何かを察した。

ドアを閉め、テーブルの前に立ち、空になった酒瓶を一瞥してから尋ねた。「由佳と喧嘩したのか？」

清次は黙ったまま、手元のグラスに酒を満たし、一気に飲み干した。

貴行は清次がさらに酒を注ごうとしたのを見て、素早く酒瓶を取り上げた。

清次は少し遅れて反応し、後から気づいて貴行を見つめ、手を差し出した。「酒を返せ！」

「僕を呼んだのは、君が酒を飲むのを見せるためか？そんな興味はない。続けて飲むつもりなら、僕は帰るぞ」

清次は全身をピタリと止め、宙に浮いた手が力なく膝に落ち、そのまま全ての力を失ったかのようにソファに沈み込んだ。

彼は目を半ば閉じて、瞳の奥に何を隠していたのか見えないが、まぶたの下の青い隈が彼の最近のやつれを物語っていた。

「彼女が離婚したいって言ってるんだ」清次は突然そう呟いたが、貴行にはその意味が通じた。

貴行は酒瓶を脇に置き、清次の正面に腰を下ろし、驚くことなくため息をついて言った。「予想通りだ」

清次は急に顔を上げた。

「この間、一緒に集まった時、君が大和を由佳に謝罪させた時、彼女の目を見たか？平静で、まったく無関心だった」

清次は驚いて、目を閉じ、必死にその時の由佳の様子を思い出そうとした。

だが、どうしても思い出せなかった。

「君はいつも由佳は物分かりがいいと言っているが、彼女はその性格上、他人に従順で自分を犠牲にしやすい。でも、一度彼女が反抗する決心をしたら、それは完全に失望したということで、もう二度と戻ることは難しい」

清次は長い間沈黙し、目を開いて貴行を見つめた。「なぜもっと早く僕に警告しなかったんだ？」

貴行は微笑んで、「警告したよ、ずっと前にね。自分の妻以外の女性に情をかけるなと。清次、君を知らない人はともかく、僕は君のことをよく知っている。あの時から君が由佳を見る目には、既に何か特別なものがあった」

清次の目はぼんやりとして、何かを思い出しているようだった。

そうか、自分はそんなに早くから由佳のことが好きだったのか？

おそらくそうだろう。

だから、由佳が離婚を提案した後も、兄妹としての関係を保つと言ったのだ。

今考えれば、本当に馬鹿げている。離婚した夫婦が兄妹になるなんてあり得なかった。

ただ、彼の潜在意識が由佳から離れたくな