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第3話

私と翔太が出会ったのは、幼い頃の偶然の命の恩返しからだった。

彼は森本家の一人息子で、ちょうど反抗期に入っていた頃、人と喧嘩をしていた。

家を追い出されていた私は偶然通りかかり、警察に通報するふりをして、彼を囲んでいた人たちから救ったのだ。

その後、翔太は恩返しを口実に、無理やり私の通う学校に転校してきた。

私がアルバイトしているときも、彼は一緒についてきた。

私は彼に問題の解き方を教え、彼は私を守ってくれて、いじめられることもなかった。時には、私を守るために怪我をしたこともあった。

だが、そんな翔太は、私が三浦家の本当の娘だと知った途端、態度を一変させた。

彼は私が美香の気持ちを考えていないと責め、私が三浦家の財産を目当てにしていると決めつけた。

私は理解できずに彼に問いただした。

「それが私の実の両親なの。美香が享受している人生は、本来私のものだった。彼女の両親が私たちを取り違え、私は虐待までされてきた。今、私は自分の身分を取り戻そうとしているだけ。それが私の過ちなの?」

後になって私は、翔太が最初から私の正体を知っていたことを知った。

私たちの出会いも彼の計画だった。森本家と三浦家は以前から婚約しており、古風な森本家の両親は、私が三浦家の本当の娘だと知れば、彼が美香と結婚できないと考えていたのだ。

彼は私を京城から追い出し、美香が三浦家の娘である地位を守ろうとしていた。

だが、彼の思惑に反して、私はそれより前にすでに真実を知り、三浦家に直接連絡を取っていた。

真相を知った私は何度も婚約の解消を申し出たが、翔太は自殺をほのめかし、私が美香に全く及ばないと言って責め立てた。それでも、森本家の両親は婚約を解消しようとはしなかった。

そして、恐らくそのことも影響して、私の18歳の誕生日に事件が起きた。

誘拐犯に美香と共に展望台へ連れて行かれ、「どちらを助けるか」と問われたとき、彼は何の迷いもなく美香を選んだ。

私は18階の屋上から突き落とされたが、それは私が生涯で死に最も近づいた瞬間だった。

幸いにも、あらかじめ用意されていたクッションのおかげで命拾いした。

生き延びたところでどうなる?

私の両親も、私の兄も、そして婚約者も、揃って美香のことしか気にかけず、私が死んでしまえばよかったのにとさえ言っていた。

こうして、たとえ美香の身分が露見しても、彼女はやはり寵愛される三浦家の娘として扱われ続けるのだ。

「私はもう三浦家と縁を切った。私たちの婚約も無効よ。これからは、私に関わらないで」

そう言って、私は電話を切った。

しっかり眠った後、私は荷物をまとめて学校へ向かった。

3ヶ月の入院生活を終えて、今は受験まであと1ヶ月少ししかない。

全県でトップの成績を取れさえすれば、大学の学費は何とかなる。

先生も私を特に気にかけてくれて、3ヶ月間の授業の抜けた分の資料を特別に用意して、丁寧にノートまで取って渡してくれた。

三浦家からの煩わしい干渉がなくなったことで、私は以前よりも随分と気分が良くなった。

クラスメイトも、私が以前より元気になったと言ってくれた。

そんなある日、教室に着いたばかりの私は、皆の視線が何かおかしいことに気づいた。

何があったのか考える間もなく、隣の席の小川真由美がすぐに駆け寄ってきて、尋ねてきた。

「美保、美保!さっき担任が来て、あなたのお兄さんが来てるって言ってたよ!」

「美保に兄なんていたっけ?嘘に決まってるよね?」

その言葉を聞いて、他のクラスメイトもすぐに集まってきて、口々に言った。

「そうだそうだ!」

「一人でずっと生活してたんだから、今さらお兄さんだなんてあり得ないよ。成績が良くなったから、急に現れたんじゃない?」

「美保、心配しないで。私たちがついてるから、絶対に君をいじめさせないよ」

「そうだよ、だってあなたは未来の県トップなんだから!」

......

みんなが口々に助け舟を出してくれるのを見て、私は思わず笑って言った。

「大丈夫だよ。多分どこかの変な人だろうね」

「私の両親は3年前に交通事故で亡くなったし、親戚ともとっくに縁を切ってる」

私が自分の身分を知ったとき、すぐに三浦家に連絡を取った。

そのことを知った養父母は私を止めようとしたが、スピードの出しすぎで橋から落ち、その場で亡くなってしまった。

私がそう話すと、みんなようやくほっとした顔を見せた。

真由美は立ち上がり、

「じゃあ、私が担任に行って、その変な人を追い出してもらうね!」

とすぐに言い出した。

その時、突然また声が響いた。

「美保」

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