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第2話

三浦父と三浦智也が車から降りて、私を不機嫌そうに睨んできた。

「こんなにいろいろ言って、結局金が欲しいんだろう」

「美香はお前みたいに下品で卑しいことはしない。最初からお前なんか娘として認めなければよかった」

三浦父の言葉を聞いて、私は思わず笑い出した。

「娘?誰があなたたちの娘なの?南町中、私があなたたちの娘だって知ってる人がどれだけいるの?私が卑しいのは、確かにお金しか目に入らないからかもしれないね。でも、それは美香がその心配をする必要がないからよ。彼女は何も言わなくても、宝石やら家やら、振り込みだってしてもらえる。でも私は、自分の実の兄に盗みの濡れ衣を着せられただけ」

私は黙り込んでいる智也を見て、胸が悪くなるような嫌悪感を覚えた。

三浦家に入ったばかりの頃、私はみんなから敵視されていた。唯一、智也だけは私に優しかった。

彼は私の怪我を心配し、成績を気にかけてくれ、誰も見ていないところで甘いキャンディをそっと渡してくれた。

「兄として、妹を笑顔にしてあげないとな」

私は彼が本当に私に優しくしてくれていると信じ、無防備に彼からのブレスレットを受け取った。

しかし、そのブレスレットがなくなったと智也が警察に通報し、美香にあげたはずのブレスレットが私の部屋から見つかったのだ。

私は必死に、これは智也がくれたブレスレットだと弁解した。

だが、母は私を平手打ちしながら言った。

「美保、お前はなんて下劣なの!智也がお前になんか話しかけるわけないじゃない。ブレスレットなんてあげるはずがないでしょ?それに、このブレスレットは智也がわざわざ美香のために特注したものよ」

私は地面に倒れ、顔を押さえたまま、信じられない思いで智也を見上げた。

その時初めて気づいた。智也はもう会社の仕事にも関わっていて、両親が一心に後継者として育てている。

もし彼が本気で私を守るつもりだったなら、私を物置部屋に住まわせるはずがない。

私が何度も傷つけられるのを黙って見ているはずがない。二人きりになる時、いつもこっそり優しくしてくれるのも不自然だった。

その出来事が終わった後、智也は私に冷たくこう言い放った。

「お前が怪我をしたのは、俺が指示したせいだよ。あのキャンディにも体調を崩させる薬を仕込んでおいた。美香の成績をお前に抜かせないためにな。美保、一つだけ嘘をついてないことがある。兄として、妹を笑顔にしてやらなきゃな。でも残念ながら、俺の妹は美香だけだ。お前なんか何様のつもりだ」

16歳の美保は、こうして最も近い存在であるはずの家族に、深く裏切られた。

過去の出来事を思い返し、当時の私はまるで何かに取り憑かれたかのように、親の愛情を求めて執着していたのだと感じた。

しかし、一度ビルから落とされてからは、もう何よりも生きることが大切だと思えるようになった。

彼らの愛は毒を包んだキャンディのようで、見た目は魅力的でも、それを口にすれば地獄に落ち、耐え難い痛みに襲われる。

今、彼らの不快そうな顔を見ても、もうこれ以上関わりたくないという気持ちしか残っていなかった。

「一つだけ、あなたたちの言う通りよ」

「私が戻ってきたのが間違いだった。だから、私はもう出ていく。元通りの生活に戻れるわよ」

三浦家の人たちに何も言わず、私はスーツケースを引き、バッグを背負って玄関を出た。

背後で大きな音を立ててドアが閉まる。

私を束縛していた鎖が静かに解けた瞬間だった。

私は軽やかにスーツケースを引きながら、歌を口ずさみつつ、新しく借りた家へと向かった。

その部屋は決して広くはないけれど、1Kでトイレも付いていて、物置部屋よりははるかに快適だった。

部屋を片付け終えた頃、私は疲れ果ててベッドに倒れ込んだ。

もう少しで眠りに落ちそうになった瞬間、急な携帯の着信音が私を呼び戻した。

無意識に電話を取ると、向こうから森本翔太の苛立った声が聞こえてきた。

「美保、また何を騒いでるんだ?美香は十分お前に譲歩しているだろう?どうして彼女を追い詰めて、家出なんかで脅すんだ?あの、理解があって素直な美保はどこに行ったんだ?」

「死んだよ」

私は体を起こし、静かに答えた。

「あなたたちが自ら見捨てて、私が落ちるのを見届けたんじゃないの?それに翔太、あなたは前から私が三浦家からいなくなることを望んでいたでしょう?今さら何を演じてるの?」

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