第4話

晴子は、父親に打たれた衝撃で呆然としていた。彼女は顔を押さえ、怒りに震えながら叫んだ。「お父さん、本当にこの愛人のためにお母さんと離婚するつもりなの！？」

私は冷笑を浮かべて言った。「私生児がこんなに大きくなっているのに、私と結婚するなんて本当に迷惑な話ね」

「亮、私あなたと離婚するわ！」

沙織は、娘が打たれたことに気づくと、すぐに彼女を後ろにかばった。

「亮、なんで愛人のために私たちの娘を叩くの！？」

周りで見守っていた学生や教師たちは、お互いに顔を見合わせ、私と沙織の間で目を泳がせていた。

亮は沙織に向かって怒鳴った。「この狂った女、もう十分騒いだだろう！」

そう言い終えると、彼は私に向き直り、優しい声で言った。「美羽、まずは病院に行こう。君が元気になったら、きちんと説明するから」

私は彼の手を振り払って言った。「病院には自分で行けるわ。今は彼らに説明するべきじゃない？」

その言葉で、亮はやっと教室の中にいた大勢の見物人に気づいた。彼の表情は一瞬で硬直し、沙織を見つめる目には、陰鬱な光が浮かんでいた。

その時、スーツを着た若い男がドアをノックした。

「美羽さん、車が外で待っています。病院までお送りしましょう」

人ごみの中で、教育局の関係者が彼を見て驚いた声をあげた。

「この人、五十嵐会長の秘書じゃないか？」

「五十嵐先生って、五十嵐会長の娘だったの？ それなら、五十嵐先生が愛人って話はありえないだろ！」

「俺も五十嵐会長の婿になれたら、一生の幸せだよな。あの人みたいに、愛人と私生児が正妻の頭越しに出てくるなんてあり得ないけど」

亮の顔は青ざめ、次いで赤くなった。周りの噂話などお構いなしに、彼は私について行こうと足を動かしたが、沙織に腕をつかまれた。

私は振り返らずに車に乗り込み、まっすぐ病院へ向かった。

病院では、検査を受けた後、ついに私は妊娠していたことが確認された。しかし、胎児はまだ小さく、衝撃を受けたため、残念ながら流産してしまっていた。

私は流産したが、不思議と悲しみは感じなかった。このことで、枕を共にしていた相手の本性を見抜けたのだから、損はしていないと思った。

「五十嵐会長は外市で会議中ですが、今回の件の経緯は既に調査中です」

「五十嵐会長はすべて美羽さんの意向に従うと言っています」

「離婚協議書を作成して