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第6話

私はスマホをマナーモードにし、彼の番号をブラックリストに入れた。こんなクズ、もう二度と関わるつもりはない。

兄の家に戻り、一緒に夕食をとっていると、謙一から兄に電話がかかってきた。

電話越しの彼の声は卑屈で、私と一緒にいた頃の傲慢さなど微塵も感じられない。

「佳哉さん、今回の支払いがまだですか?それと、あの投資プロジェクトも引き続き支援してもらえませんか?古賀グループには佳哉さんの助けがどうしても必要なんです」

彼は、頼りにしている大物が私の兄であることを知らない。ただひたすら「佳哉さん」と呼んでいた。

私の家族をないがしろにし、毎年の正月にも顔を出したことがない。

今さら後悔したところで何になる?

兄の声は冷たく、はっきりと断っていた。

「無理だ」

一週間も経たないうちに、古賀家の資金繰りが破綻し、従業員の給料さえ支払えなくなった。

彼は、兄が開催する慈善晩餐会のことを知り、そこで顔を出して投資を引き寄せようとした。

その晩、謙一と蝶子は入口で止められていた。

「申し訳ありませんが、招待状がない方はお入りいただけません」

謙一は焦って、自分の携帯を見せた。

「これを見て、俺は会長と通話履歴があるし、LINEの友達でもあるんだ。それでもダメ?」

警備員は苦笑した。

周りを見渡しながら謙一を見て言った。

「周りの方々はみな億万長者ですよ。あなた様のような数百万程度の社長がここにふさわしいとお思いですか?会長が直接お迎えに来るなら話は別ですが、そうでなければ入場はお断りです」

謙一は焦り、袖をまくりあげて中に入ろうとするが、大柄な警備員にあっさりと放り出され、尻もちをついた。

その姿は、自宅で見せていた威勢などどこにもない。

「もう一度警告しますが、次にまた乱暴なことをしたら、今度は追い出すだけでは済みませんから」

警備員は無表情で謙一に告げた。

私は会場の隅から謙一がほとんど泣きそうになっているのを見ていた。

もし中に入れなければ、古賀家は本当に終わってしまうかもしれない。

その時、蝶子がライブ配信を始めていた。カメラに向かっていろいろなポーズを取りながら、「みなさん、こんばんは。これから有名な白坂家の晩餐会に行くんですよ。楽しみにしていてくださいね!こんなチャンス、めったにないですからね!」

謙一はその騒がしさに頭を
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