共有

第5話

イヤホンから、「全部悠人のせいだよ。彼に絵を探してあげようとして、転んで腕を痛めちゃったんだもん。

あなたは手で食べていく人なのに、もし絵が描けなくなったら、私は一生後悔するわ」

と話す美咲の甘ったるい声が聞こえてきた。

その隣では、真一の落ち着いた声が響いた。

「大丈夫だよ、ちょっとした怪我だから、そんなに気にしなくていいよ」

僕は遠くへ歩きながら、胃の中にハエでも飲み込んだような吐き気を催した。

イヤホンの中の声は続いていた。

「鈴木先生、あなたが彼のせいで怪我をしたから、私はすごく辛いの」

「美咲、大丈夫だよ。僕が山本さんに君の最高の作品を見せようとしたから、うっかり転んじゃったんだ。彼のせいじゃないよ……」

「鈴木先生、本当に心が広いのね。悠人は全然私のことをわかってくれないの。あなただけが私を気にかけてくれる」

僕は思わず笑ってしまった。

僕は、家で美咲にどんな仕事もさせずに、毎日一生懸命働いて君を養ってきたのに、君は僕が君のことを全然わかってないと言うのか。

何をすれば君を理解したことになるんだ?

裸の絵を描くことか?

真一がこんな絵をネットに投稿していることを君が知ったら、どう思うんだろう。

僕は即座に音声を保存した。

録音機は、美咲が気づかないうちに彼女のバッグに仕込んだものだった。

真一のアカウントのプロフィールをモザイク処理した画像を友達グループに送った。

「やあ、これって、こういうサイトとこのものって、わいせつ物頒布に該当するよな?」

相談すると、中村涼介からすぐに返信があった。

「兄さん、そんなことまで気にしてるのか?」

「ちょっと個人的な恨みがあるんだ」

「それなら、早く言えよ、兄さん。すぐに通報しといたよ」

グループ内の他のメンバーも次々に「通報済み」と書き込んできた。

涼介が個別にメッセージを送ってきた。

「兄さん、僕の知り合いに彼のIDを追跡できる奴がいるんだ。どうする?片付けるか?

ネットのセキュリティ部門にIDを報告して、事が大きければ、オフラインでも追跡できる」

涼介のメッセージを見て、僕はニヤリと笑った。「頼むよ、涼介!」

これまで溜め込んでいた感情が、ついにこの瞬間に爆発した。

美咲は夕方に、なんと真一を連れて帰ってきた。

彼女は一言、「鈴木先生、最近家に事情があっ
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status