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第3話

真一は笑顔を崩さず、僕を家の中に招き入れ、

「美咲、旦那さんが君を迎えに来たよ。君のことが心配でたまらないんだね」と冗談めかして言った。

美咲は僕を見ると、微かに眉をひそめ、

「どうして来たの?」と言った。

「そりゃあ、君がここで二ヶ月間学んだ成果を見に来たんだよ。最近、なかなか君に構ってあげられなかったからね」

真一が口を挟んだ。

「美咲さんは本当に上達しましたよ。これまで教えた中で最も才能のある生徒だ」

美咲は恥ずかしそうに笑いながら言った。

「そんな、鈴木先生、冗談ばっかり」

真一は僕に向かって、

「いや、冗談じゃないよ。美咲の絵を見せてあげようか?」と言った。

僕はすぐに応じた。

「もちろん、見せてくれ」

20万円も払った授業料で、どんな絵を描いているのか見せてもらわないと気が済まなかった。

真一は顔に微笑みを浮かべたままだったが、まさか本当に見せるとは思っていなかったのかもしれない。

彼は画室に向かい、「少し待っててくれ、画室は物が多くて、ちょっと探す時間をくれ」と言って部屋を出た。

真一が出て行った後、美咲はすぐに不機嫌な顔をして、「何しに来たのよ、邪魔しないで」と言ってきた。

「迎えに来たんだ」

彼女は眉をひそめながらこう言った。

「私は自分で帰れるでしょ?まさか本当に鈴木先生が言ったように、私のことが心配なんじゃないわよね?

悠人、こんなことされると恥ずかしいよ。鈴木先生はただの先生なのに、ここまで来るなんて、私を侮辱してるわ」

彼女の言葉は、可愛らしい外見とは裏腹に、鋭く攻撃的なものだった。

浮気をしていたのは美咲なのに、威張ってくるのか。

彼女が僕にこんな態度を取るのも、すべて僕が今まで彼女に甘やかしてきたからだ。

あと二日だけ我慢する。どこまで偉そうにできるか見せてもらおう。

隣のアトリエから物が落ちる音が聞こえると、美咲はすぐに駆け出して行った。

二人がアトリエにいる間に、僕は彼らが描いた絵を探し始めた。

リビングにはたくさんの空の額縁が、隅に積み上げられていた。

一瞥したが、ほとんどが風景画だった。

ついに、真一の寝室で、裏返しにされた一枚の絵を見つけた。

僕はその絵をひっくり返すと、女性の体が描かれていた。

胸の前にはシーツがかけられており、ソファに横たりながら挑発的な目つきで前方を見つめ、手招いていた。

しかしそれは美咲ではなく、別の女性だった。

この女性には見覚えがあった。以前、美咲をこのアトリエに登録しに来た時に見かけたことがあった。

もしかして、真一の生徒全員が描かれたのか?

疑問に思い他の覆われた絵もめくると、真一が描いた絵がいくつも出てきた。

彼の寝室には二、三十枚の絵があったが、すべてが女性の体だった。

顔も、みんな違っていた。

数枚は美咲のものだった。

最初は人物素描だったが、徐々に開放的なものが描かれるようになっていた。

そして、つい先ほど目にしたあの絵を見た。キャンバスに触れると、まだ塗料が乾いていなかった。

胸元には小さな黒子が一つあって、美咲の体に間違いなかった。

彼女の顔には、あの可愛らしい笑みが浮かんでいた。

僕は一歩後退し、誤って机にぶつかり、パソコンの画面が明るくなった。

画面を見ると、それはオークションサイトであった。

そこには、さっき見た女性たちの絵が並んでいた!

一角に通知が表示された。「一列目の三番目の絵の値段はいくら?」

真一はこれを売って金を稼いでいるのか?

しかも、ネットでこんな他人の名誉を傷つけるような写真を公開していたなんて。

本当に汚らしい、真一はろくな奴じゃない。

誰でも一度はアダルトサイトを見たことがあるかもしれないが、それは見知らぬ別の世界の話だった。

しかし、今画面に映っているのは、僕の妻であり、身近な人間だった。

生理的な嫌悪感をこらえながら、僕は写真を撮り、動画を録画し、パソコンのアカウント情報や取引記録などの証拠を残した。

そして部屋のドアを静かに閉め、僕はまっすぐに賃貸の家へと戻った。

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