第5話

この言葉を聞いて、隆也の顔は一瞬で青ざめた。

彼は本当に信じたくなかったが、携帯の番号は確かに病院からのもので、信じざるを得なかった。

私が興奮のあまり血を吐いたのを見て、彼はさらに動揺して叫んだ。「智美！！」

その恐怖に満ちた表情は、あの年の私の病床の前で見たものとまったく同じだった。

だが、私の心にはもはや少しの感動もなく、ただ完全な嫌悪だけが残っていた。

「救急車、そうだ！救急車だ」隆也は駆け寄り、私を抱きしめ、慌てて救急車を呼んだ。その手は震えていた。

美咲が彼の腕を引っ張って言った。「隆也さん、間違ってない？ニュースには智美さんの家じゃないって書いてあったわ」

隆也は彼女を押しのけ、私の母の肺がなぜ悪いのかをよく知っていた。

それは彼が私の家で過ごした最初の冬のことだった。

冬が始まると、両親は彼に厚い綿の服と靴を用意し、朝出かける時には温かい牛乳を持たせてくれた。

だが、その年の期末試験の成績は依然として満足のいくものではなかった。

隆也は自分が家にいる資格がないと感じ、置き手紙を残して家を出た。

母は雪の夜に彼を一晩中探し、夜明け前にようやく彼を家に連れ戻した。

翌日、母は倒れ、医者は冷たい空気を吸い込みすぎて肺に損傷を受けたと言った。

彼は激しい罪悪感に駆られた。

それ以来、母は注意深く療養され、家には酸素吸入器が常備された。

だから、電話の向こうで「肺が悪い」と言われた瞬間、彼はそれが私の母だと確信した。

救急車がすぐに到着し、美咲は何かを言おうとしたが、隆也に押しのけられ、彼は私を抱えて救急車に乗せた。

私は興奮で胸が詰まっていたが、車の中で意識を取り戻した。

目を開けると、向かいの隆也が見えた。彼は間違いを犯した子供のように怯え、不安げな様子だった。

私が目を覚ますと、彼は最後の一縷の希望を抱いて、無理やり笑顔を作り、慎重に尋ねた。「智美、間違いじゃないのか？ニュースでは火事は7号棟だと書いてあったけど？」

彼のおびえた姿を見て、私はただ笑いが込み上げてきた。

彼の目を見据えて、私はニュースの見出しを一語一句読み上げた。「7月3日、佳園団地の2軒の家が火災に見舞われ、多くの死傷者が出ました。調査によると、ガス漏れが原因とされています」

「隆也、私が出かけるときにちゃんと伝えたはずよ。コンロの上に料理