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娘が亡くなった時、夫は初恋の犬の誕生日を祝ってた
娘が亡くなった時、夫は初恋の犬の誕生日を祝ってた
Author: 純愛寺 門主

第1話

私は全身を震わせ、涙をこらえて、憎しみを込めて歯を食いしばりながら言った。「隆也に電話を代わって!」自分の娘を放っておいて、犬の誕生日を祝うなんて、彼は人間なのか!

私は隆也が美咲をなだめる声を聞いた。しばらくして電話に出た彼は、厳しい口調で言った。「美咲は心からあなたを誘ってくれたのに、どうして怒らせるんだ?彼女は西洋の教育を受けた人で、あなたとは違うんだ!彼女に謝らない限り、俺は戻らない。自分で両親とさゆりに説明しろよ!」

その言葉を聞いた瞬間、私はこらえきれずに泣き声を漏らしてしまった。

説明なんてもう必要ない、彼らには何の説明もいらない。

隆也は私の泣き声を聞いてさらに苛立ち、「またかよ。美咲は帰国したばかりで友達も少ないんだ。彼女の誕生日を手伝って何が悪い?お前の家族が家族なら、彼女にとってペットも家族なんだよ」

本当は彼に問いただしたかった。

他人の犬が自分の娘より大事なのか。

でも彼と言い争う力はもうなかった。次にやるべきことが待っている。

涙を拭き取り、電話を切って救急車に続いて病院へ向かった。

その晩、両親はICUに運ばれ、救命措置を受けた。

翌日、さゆりの葬儀を執り行った。

三日目は警察の調査に協力し、各方面の損害賠償を決定した。

わずか三日間が、私にとっては一生分のように感じられ、すべての力を使い果たした。

四日目、美咲がSNSを更新し、位置情報を隣国に設定していた。

それはマルチーズ犬の写真で、前にはケーキが置かれ、映り込んでいる男性の手がろうそくを灯していた。

キャプション:パパとママに愛される子供は一番幸せ。最高の誕生日だったわ。来年はどこに行こうかな?

私は一目で、その手が隆也のものであることを見分けた。

右手の人差し指の関節に小さな傷跡があったからだ。

それはさゆりが三歳のとき、ふらつきながら台所に来て、つま先立ちで台の上の果物を取ろうとしたときのことだった。手がナイフに触れて、ナイフを落としてしまった。

隆也はすばやく反応し、さゆりを抱き寄せたが、落ちてきたナイフが彼の手に傷をつけた。

そのとき、私は薬を塗りながら、怯えるさゆりに「これはお父さんが君を守った証だよ」と言った。

今、その傷跡を見るたびに胸が痛む。

さゆりは亡くなるまで、お父さんが自分を愛していないのではないかと思い続けていた。

私はその投稿にいいねをし、コメントを書いた。「早く帰ってきて離婚しなさい。そうでなければ、名もなき私生児として扱われるわよ」

そのコメントを書いたその日に、隆也は美咲を連れて戻ってきた。

「どこにいる?家に戻ってこい」

私は分かっていた。彼の言う「家」とは、彼の家のことだ。

私は冷たく答えた。「いいわ、ちょうどあなたに渡すものがある」

彼の家に行き、扉を開けると、隆也の顔に嘲笑が浮かんでいた。「さゆり、今回は少しは誇りを持ってると思ってたのに、やっぱりこうなんだな……」言葉が一瞬止まり、形容詞を探すようにして、ゆっくりと最後の一言を吐き出した。「卑しい」

私は彼の嘲笑を無視し、肩を押しのけてリビングへ向かった。

隆也は私の後をついてきて、嫌味を口にしていた。「その顔、誰に見せるつもりなんだ?」「ただ誕生日に行かなかっただけだろう?全部お前が美咲に謝らなかったせいだ。早く謝っていれば、俺は深夜まで間に合ったのに。全部お前のせいだ」

私はリビングを見回した。

さゆりはこの誕生日のために特別に手作りのクッキーを作り、隆也を招待しに届けに行った。「ママがパパはお仕事で忙しいから邪魔しちゃダメって言ったけど、さゆりはパパと一緒にお誕生日を過ごしたいから、ママに教えてもらって、クッキーを作ったんだ。パパのために」

今回来たのは、離婚協議書を渡すためだけではなく、そのクッキーの袋を持ち帰るためでもある。

隆也には、さゆりが手作りしたクッキーを食べる資格はない。

「さゆりが怒っているのはきっと……」

もうこれ以上聞いていられず、急に振り返り、目が赤くなって叫んだ。「黙って!あなたにさゆりの話をする資格なんてない」

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