第 0356 話

海咲が有紀の焦る声に気づき、再び彼女を見上げた。

彼女の視線は州平のオフィスに向いていて、どうやら彼女に行ってほしいと思っている様子だった。

以前は州平のオフィスのことを心配させることはなかったが、同僚たちが話していることを考えると、真剣に受け止めるべきかもしれないと思った。

しかし、オフィスの中では実際に何かが起こっている。

彼女は時には鈍感でいることができれば、無駄に考えすぎて自分を追い詰めることもなかっただろう。

海咲は動かず、手をパソコンの上で打ち続け、淡々と「オフィスに行って何をするの？社長のことは私が気にすることなの？」と言った。

彼女は有紀に、同僚たちの噂をあまり気にしないように