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第245話

「私......」

若子は思わず息を飲んだ。この男、藤沢修は本当に言いくるめるのが上手で、彼女を言葉で追い詰めるのが得意だった。

いや、言いくるめているというよりも、彼女自身の言葉があまりに軽率だったのだろう。確かに「痛かったら言って」と言ってしまったのは彼女だ。最初から言わなければよかったのかもしれない。

でもまさか、修がこんな風にしょっちゅう「痛い」と言ってくるとは思わなかった。まるで子供みたいに。

「じゃあ、ちょっと我慢してね。どうしても包帯を巻かないと、傷がそのまま晒されてしまって危ないから」

若子は彼の背中に座り、一つ一つ丁寧に包帯を巻き始めた。彼女の呼吸が耳元に時折触れ、ふっと遠のいたかと思えばまた近づく。

彼女の手が再び修の胸に触れ、体を前に傾けて左手で包帯を巻きつけようとしたとき、修が突然顔を回し、唇が若子の鼻先に触れた。

若子はその場で固まってしまった。鼻先に触れた瞬間、まるで電流が走ったような感覚だった。

修は何もなかったかのように再び顔を戻し、平然としている。

若子は我に返り、胸の奥にじわっと痛みが広がるのを感じた。

彼がこうして近づいてくるたび、ほんのわずかな接触でも心が締め付けられるようだった。

心臓が微かに痙攣するように痛み、その痛みは肌に感じる傷の痛みとは違って、息苦しくなるような感覚だった。

選べるなら、彼女は体の痛みの方を選びたい。こうした心の刺すような痛みよりも。

「何をぼーっとしてるんだ?」修が振り返り、深い瞳で彼女を見つめた。「どうかしたのか?」

「別に」若子は無理に微笑んだが、その表情には感情の色が薄かった。瞳の奥に一瞬だけ寂しさがよぎった。

彼女はすぐに包帯を巻き終わり、ハサミで切って留めた。

「できたわ。寝るならうつ伏せか横向きでね。仰向けはダメよ」

まるで厳しいママのような口調だった。

修の傷は少なくとも四、五日はかかるだろう。おばあちゃんもあんなに厳しく叩くことはないのに、どうして実の孫にそこまでできるのかと、少し理解できなかった。

若子はおばあちゃんの気持ちも理解していたが、それでも修の傷を見ていると胸が痛んだ。

若子はうつむき、黙々と薬箱の中の道具を片付けた。

修は若子が部屋を出ていこうとするのを見て、急いで尋ねた。「どこに行くんだ?」

「薬箱を片付けに行くだけよ」と若
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