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第237話

「あなたが離婚の話を持ち出さなければ、何も問題はなかったのに!」松本若子はほとんど叫ぶように言った。もはや言い争いを避けるつもりもなく、激しい勢いで藤沢修の手を振り払った。「藤沢修、離婚を切り出したのはあなたでしょ?桜井雅子と一緒になるために。今になって離婚したことを全て私のせいにしないで!もし私に非があるとすれば、それはあなたと結婚したことだけよ!心の中に別の女性しかいない男と結婚したのが、私の人生で一番の過ちだった!」

若子はそう言い放つと、勢いよく車のドアを開け、そのまま車に乗り込み走り去った。

藤沢修は、遠ざかっていく車をじっと見つめ、その目に寂しさが浮かんでいた。

若子の言葉は、一つ一つがまるで重い槌で心を打つようだった。

修は大きくため息をつき、しばらく考えた後、再び別荘の中へと戻っていった。

約30分後、藤沢修は別荘から出て、車に乗り込みその場を離れた。

......

松本若子は、自分の住まいに戻ると、全身が疲れ切っていた。今日はおばあちゃんと一緒に夕食を食べるつもりだったが、結局それもできず、すっかり日が暮れていた。

彼女はベッドに倒れ込み、大きくため息をついた。

「藤沢修......本当に最低な男だわ。どうしてこんな男と結婚してしまったんだろう…」

彼女は、修がすべての責任を自分に押しつける姿勢に憤りを感じていた。

彼は良い夫ではなかったし、今や良い人間ですらなくなってしまった。若子は、修を完全に見誤っていたのだ。

慣れない環境に引っ越してきたばかりで、若子は心の落ち着かない夜を過ごし、翌朝早く目を覚ました。

昨日、おばあちゃんに「朝にはまた来る」と約束していたため、彼女は謝罪するためにもう一度訪れるつもりだった。

藤沢修がおばあちゃんの気持ちをどう考えているかは関係ない。

若子にとって、おばあちゃんはこの世で最も大切な人だった。どんな犠牲を払っても、彼女の許しを得たいと心から願っていた。

若子は出かける前に、洗面所でしばらく吐き気を感じていた。

彼女は運が良く、ひどいつわりに悩まされるタイプではなかった。これまでに、つわりが非常に重く、一日中何を食べても吐いてしまうような妊婦さんを見たことがある。

幸い、自分はそこまでひどくなくて良かった。もしそうだったら、周りの人にもすぐに妊娠していることがばれてしまっただろ
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