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第185話

「若子」修は彼女の名前を低く、かすれた声で呼んだ。その目には、まるで燃え上がるような情熱が宿っていた。

二人の周囲の空気は急に熱を帯び、温度が上がっていく。

若子は手のひらに汗がにじむのを感じながら、

修がどんどん彼女に近づいてくるのを見つめていた。そして、ついには彼の唇が彼女に触れた。

若子は目を閉じ、彼の温もりを感じた。彼女はもう二度と修とキスをすることはないと思っていたのに。

しかし、修のキスは単なる軽いものではなく、徐々に激しくなり、彼女をより深く求めていく。彼の大きな手が、彼女のパジャマをそっと撫でて開いていく。

若子はその瞬間に我に返り、急に目を見開き、修の手を掴んでその行為を止めた。「待って!」

修の動きが一瞬で止まり、彼は彼女の緊張した表情をじっと見つめた。そして、ゆっくりと手を引き戻し、彼女の顔を優しく包み込みながら、穏やかに言った。「心配するな。君を傷つけたりしないよ」

彼女がいつも恥ずかしがるのは知っている。だから、修は自分が彼女に教えるべきだと思っていた。

「違うの、そういうことじゃなくて......」若子の声は震えていた。「私、話したいことがあるの。お願い、先に起きてくれない?」

こんな体勢では話せない。もし修が話に怒ったら、逃げられないと思った。

修は息をつき、少し苛立った表情を浮かべながらも、彼女の言葉に従ってベッドから起き、横に座った。「なんだ、話してくれ」

もしかして、また離婚の話だろうか?

若子は心の中で何度もその言葉を練り直したが、実際に口に出すのは想像よりもはるかに難しかった。

「修、私......」

突然、携帯電話が鳴り響いた。

若子の言葉はそこで止まり、

彼女は「あなたの電話よ」と言った。

「無視していいから、続けてくれ」修は電話を気にせず、若子に促した。

しかし、鳴り続ける電話が若子の集中力を乱してしまった。

修はついに携帯を手に取り、画面を確認した。「雅子」という表示がそこに映っていた。

若子もそれを見て、心が沈んだ。

再び桜井雅子の存在が彼らの間に割って入ったのだ。

修は電話を数秒間じっと見つめてから、無言で切り、若子に向き直った。「さあ、話してくれ」

「彼女の電話、出ないの?」若子は驚き、修が桜井雅子の電話を切ったことが信じられなかった。

「急ぎの用事じゃないだろう
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