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第179話

夜が更け、若子と修は家に戻った。

二人は外で夕食を済ませていたため、帰ってすぐに洗って寝るだけでよかった。

若子は修を部屋まで送ったあと、バッグを手に部屋を出ようとした。

「どこに行くんだ?」修が彼女の手首を掴んだ。

彼女は答えた。「あなたは早く休んでね。私は自分の部屋に戻るから」

「若子、ここが君の部屋だよ」

若子は視線を落とし、彼の大きな手を見つめた。「でも、私たちは別々に寝るって決めたじゃない」

彼女は、以前に戸籍を盗もうとした夜、修と一緒に寝たことを覚えていた。しかし、あの時は「最後の夜」と思っていたのだ。

でも、そんな「最後の夜」は続き、延長されていった。

「俺たち、今は離婚を保留してるんだろ?別に部屋を分けて寝る必要はないだろ。こっちに戻ってきて寝よう」修は真剣な表情でそう言った。

若子の心臓は激しく鼓動した。彼女は勇気を振り絞って自分の手を引き戻した。「それは」あまりよくないと思うわ。ただ、離婚を一時的に延ばしているだけだし。早く寝てね」

彼女は固く決心し、その場を離れようとした。

修は彼女の背中を呆然と見つめ、深いため息をついた。

突然、彼は数歩後ろに下がり、額に手を当て、低い声で苦しげな呻き声を漏らした。

若子はすぐに駆け寄り、彼を支えた。「修、大丈夫?」

修は彼女に頼るようにして弱々しく体を預け、小さく息を吐きながら言った。「大丈夫だよ。君は休んでいいよ、俺は自分で大丈夫だから」

彼は意地っ張りに彼女をそっと押し戻し、ふらふらとベッドに向かおうとした。しかし、その体は右側に崩れ落ちた。

「修!」若子は彼を後ろから抱きしめ、ベッドに座らせた。

修は座ることさえままならず、頭を彼女の肩に預けて、息を荒げた。「君」君は行っていいよ。俺はここで少し休むだけだから」

意地を張りながらも、

彼の体は正直で、彼女の腕の中に力なく崩れ落ちていく。彼の手はまるで意思を持ったかのように、彼女の服の裾をつかみ、軽く揺らした。

彼の言葉と体がまるで別の存在のようだった。口では大人のように振る舞いながら、体はまるで子供のように甘えていた。

こんな彼の姿を見た若子は、もう彼を一人にして部屋を出ることなどできなかった。もし夜に何かあったらどうするのだろう。

「お医者さんも、この数日間はしっかり休むようにって言ってたわ。早く寝てね」
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