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第176話

「あの女はどこだ!あの田中秀って看護師はどこにいるんだ!」

バンッと扉が激しく開けられ、一組の中年夫婦が病室に押し入ってきた。

「田中秀、お前が田中秀だな?」

ベッドに横たわる人物を見つけると、夫婦はすぐに駆け寄り、彼女の掛け布団を無造作に引き剥がした。その動きは極めて乱暴だった。

「何してるの!」

松本若子は力強く女性を押しのけ、田中秀のベッドの前に立ちはだかり、緊張した表情を浮かべた。

「どけ!」中年男性は粗暴に松本若子を押し倒した。

「きゃあ!」松本若子はとっさにお腹を庇った。

「何してるのよ!」田中秀は急いでベッドから降り、松本若子を助け起こしながら心配そうに尋ねた。「大丈夫?」

「私は大丈夫」松本若子は、お腹に違和感を感じなかったことに少し安心した。

再び夫婦が近づいてくると、松本若子は田中秀をすぐに後ろに引き寄せ、痩せた体で凶暴な夫婦を防ごうと立ちはだかった。「あなたたち、何をしようとしてるの?」

「この看護師のせいで、うちの息子が警察に捕まったんだ!俺がしっかりお前を懲らしめてやる!」

夫婦は怒り狂い、まったく理屈が通じない様子だった。

「暴力はやめて!」松本若子は田中秀を守るように前に立ち、「あなたたちの息子はすでに捕まったのよ、あなたたちまで警察沙汰にしたいの?冷静に話し合おう」

「何を話し合うんだ!この看護師が悪いんだ!うちの息子を侮辱しやがって、息子が一時的に彼女を突き飛ばしただけだろうが!」

「私は彼を侮辱していません」田中秀は震える声で答えた。「忙しかったから、少し話し方が急だったかもしれないけど、侮辱なんてしてない」

「俺たちは関係ない!お前のせいでうちの息子が捕まったんだ、このクソ女め!」

夫婦は話を聞こうとせず、田中秀に向かって再び突進してきた。

松本若子は田中秀の手を引き、ドアの方へ逃げようとしたが、

中年男性は彼女を掴んで病室に引き戻した。

「きゃあ!」田中秀は叫び声を上げた。

廊下の医療スタッフが騒ぎを聞きつけて駆けつけ、病室の中は混乱に包まれた。

田中秀は床に押さえつけられ、松本若子は急いで彼女に飛びつき、田中秀を抱きしめた。「やめて!」

「若子、あなたは逃げて!私のことは関係ないわ、早く逃げなさい!」

松本若子は妊娠中で、万が一殴られでもしたら大変なことになる。

しかし、松本
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