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第110話

「おばあちゃんも、若子に会えて嬉しいよ」石田華は優しく彼女の頭を撫でた。

「おばあちゃん、私ほどは嬉しくないでしょう?」

「この子ったら......」石田華は口元をほころばせ、大笑いした。「まるで子供みたいね。私と競争しようなんて」

「もちろん、競争するんです」松本若子は茶目っ気たっぷりに言った。

「この子ったら」石田華は感慨深そうに言った。「競争するなら、あなたの旦那としなさい。どっちが相手をより愛してるか、勝負しなきゃ」

その言葉を聞いた瞬間、松本若子の笑顔は固まり、胸の中に痛みが広がった。

「愛」という言葉が、彼女と藤沢修の関係に使われると、皮肉としか思えなかった。

藤沢修が愛しているのは桜井雅子だ。

松本若子は心に抱える苦しみを石田華に打ち明けることができず、胸の中に押し込めた。

石田華はそのことに気づかず、さらに話を続けた。「若子、覚えておきなさい。おばあちゃんはいつもあんたの味方だよ。男にはあんまり甘やかしちゃいけない。少し厳しくして、たまには彼らに苦労させなきゃいけないんだから。そうすることで、修がもっとあんたを大事にしてくれるよ。愛される方が、ちょっと少ないくらいがちょうどいいんだよ」

松本若子は胸の中に苦みを感じながらも、石田華の言葉に思わず笑ってしまった。

おばあちゃん、本当に策士ね。

彼女は石田華の胸からそっと身を引いて、「わかりました、でも、修もおばあちゃんの孫ですから、そんなこと言ったら、彼が傷つきますよ」と冗談っぽく言った。

「傷つけばいいんだよ。男の子が少し悔しい思いをしたって、なんの問題もないよ。女の子が苦しむほうが、ずっと悪いんだから」石田華は松本若子を溺愛しており、孫嫁に対してはどこまでも甘い。

松本若子がすること、言うことは何でも良いが、他の人が何をしようと、石田華は気に入らないのだ。

「そういえば」石田華はふと思い出したように、「修はどうしたんだい?またあんただけで来たのかい?」

前回もそうだった。若子は来たのに、藤沢修はなかなか現れなかった。

「修は会社の仕事で忙しいんです」と松本若子は答えた。

「また仕事かい?なんでそんなに仕事があるんだい?待ってなさい、私が電話してやるよ」

石田華は隣に置いてあった携帯を手に取った。

「おばあちゃん、本当に会社の仕事なんです。信じてくださいよ、お願
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