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第114話

やっぱり、松本若子が一番上手に石田華をなだめる。松本若子に宥められると、いつも石田華の怒りはすぐに収まる。

「そうだね、まず私たちで先に食べよう。若子を空腹にさせるなんて、おばあちゃんにはできないよ」

こうして、祖母と孫娘の二人は先に食事を始めた。

「若子、このシチューを食べてごらん。あなたが特に好きだって知ってるから、キッチンに特別に頼んで、辛めにしてもらったんだ。あなたの口に合うはずだよ」

「ありがとうございます、おばあちゃん」松本若子は一口食べ、何度も頷きながら「本当に美味しいです」と言った。

「美味しいなら、たくさん食べなさい。これからは修に遠慮することはないよ。あなたは辛いものが大好きなのに、彼に合わせて食べなくなったでしょう?彼はあなたの好みに合わせてくれたことなんてないんだから」

石田華は、二人と一緒に住んでいないにもかかわらず、少しは事情を知っていた。

「おばあちゃん、修は私にとても優しいですよ。ただ、彼はそれを表に出すタイプじゃないんです」

松本若子は、石田華が修に怒ることを避けたいと思っていた。彼女はまるで一家を結びつける絆のような存在だった。

二人は気づかなかったが、藤沢修はちょうどダイニングの外に立っていて、入ろうとしたところで、松本若子の言葉を耳にした。

彼は、自分が本当に松本若子に対して良くしてきたのか、少し罪悪感を覚えた。

「そうだね、修は、何でも心の中に溜め込んでしまうところがある。それに、彼の父親と少し似ている部分があって、時々人を見誤るんだよ。だから私は、彼には少し厳しくしているのさ。父親のように間違いを犯して、光莉を…傷つけてしまわないようにね」

「おばあちゃん、お義父さんとお義母さんの間には、何があったんですか?」松本若子は今まで聞かなかったが、今日は石田華が自ら話し始めたので、詳しく聞きたいと思った。

石田華はため息をついて言った。「この話は、滑稽と言えば滑稽なんだけどね。どこから話せばいいのか…」

石田華がしみじみと語る姿を見て、松本若子は言った。「おばあちゃん、無理に話さなくても大丈夫ですよ。もし話しにくければ、言わなくてもいいんです」

石田華は笑って言った。「若子、そんなことはないよ。あなたも藤沢家の一員なんだからね。ただ、この話はあまりにも恥ずかしい話だから、今まで言ってこなかったんだよ
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