共有

第062話

藤沢修が桜井雅子の元に到着した時、彼女はベッドに横たわっていた。

すぐに彼は彼女の隣に座り、心配そうに言った。「大丈夫か?」

桜井雅子は顔色が悪く、病状が明らかに重い。息をするたびに身体が震えている。

「修、来てくれてありがとう。でも、私、彼らにあなたに連絡しないようにって言ったのに…あなたは忙しいのに、なんで彼らはそんなことをしたの?」

彼女は苛立ちながらベッドから起き上がろうとした。

「動かないで」藤沢修はすぐに彼女をベッドに押し戻し、優しく言った。「彼らが俺に連絡したのは正しいことだ。お前、どうしてこんなにひどい病気になったんだ?」

桜井雅子は咳き込み、弱々しく首を振った。「全部私が悪いのよ…この身体、本当に嫌になる。こんなに弱くて、生きている意味がないわ、いっそ死んでしまえばいいのに」

「そんなこと言うな」藤沢修は眉をひそめ、心底からの心配を見せた。

その時、召使いがタオルを持ってきた。藤沢修はそれを受け取り、彼女の頭にそっと置いて、優しく押さえた。「心配するな。すぐに良くなる」

「良くなったところで、どうせまた病気になるでしょ。こんな風に何度も病気になって、修、私もうどれだけ耐えられるかわからない…」桜井雅子は藤沢修の手をぎゅっと握りしめた。「もういいから、私をそのまま放っておいて…自分の運命に任せて生きていくわ」

「そんなこと言うなよ。俺を本気で怒らせたいのか?」藤沢修の声には少し怒気が含まれていたが、それは本当の怒りではなく、彼女への優しさと許容が感じられた。

彼が本気で怒っているのを見て、桜井雅子はそれ以上何も言わなかった。

藤沢修はその日一日中、桜井雅子のそばにいた。日が暮れる頃、彼女の熱はようやく引き、意識がはっきりとしてきた。

「雅子、もう大丈夫だよ。熱が下がった」藤沢修は体温計を見て、安堵の表情を浮かべた。

「修、あなた、私のために一日中ここにいてくれたの?」

藤沢修は「うん」と一声返し、「君が無事ならそれでいい」と言った。

「あなたがそばにいてくれるだけで、私はどんな苦しみでも乗り越えられるわ。あなたが私の生きる理由、私のすべてなの」桜井雅子は藤沢修を崇拝するような眼差しで見つめた。

その純粋で誠実な表情を見ながら、藤沢修の脳裏には、松本若子が言った言葉がよぎった。玉の腕輪の話、そして彼が雅子を国外に送った
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status