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第060話

藤沢修が松本若子に怒られて、少し焦った様子でまるで悪さをした子供のように落ち着きを失っていた。

田中秀も松本若子が怒りで体調を崩さないか心配して、何か慰めようとした時、不意に藤沢修が一言、冷たく放った。「田中さん、ごめん」

「…」

最初、田中秀は自分の耳を疑った。彼が本当に謝っているとは思えなかった。しかし、彼女が顔を上げて藤沢修の目を見ると、確かに彼は彼女に向かって謝罪しているのがわかった。

視線には特に反省の色はないものの、松本若子のために彼が謝罪したこと自体が、彼にしては驚くべきことだった。

田中秀は驚きで一瞬言葉を失ったが、数秒後に我に返り、口元をほころばせた。「大丈夫です」

松本若子の親友として、もし彼女の夫と対立するようなことがあれば、松本若子がその間で困ってしまうだろう。だからこそ、田中秀は「大丈夫」と言った。

「田中さん、さっきは言い方が悪かったけど、ここには俺がいるから、もう遅いし、休んでください」

藤沢修の声は先ほどよりも冷静で、普段の彼らしい落ち着いた口調に戻っていた。

松本若子は、二人がお互いに謝罪と受け入れをしたのを見て、少し気分が晴れた。「秀ちゃん、明日は仕事でしょ?もう遅いから、帰って休んでね。今夜は本当にありがとう。今度ご飯おごるから!」

「大丈夫、じゃあゆっくり休んでね」田中秀はそう言った。

松本若子は「うん」と頷いた。「気をつけて帰ってね。修に送ってもらってもいいよ」

「いやいや、本当に大丈夫。自分で帰れるし、車で来てるから。それじゃ、またね」

田中秀は病室を後にしたが、藤沢修に送ってもらうなんて冗談じゃない。あの閻魔様に送ってもらうなんて怖すぎる。

病室を出た田中秀はそのまま帰らず、病院の当直休憩室で眠ることにした。明日早番なので、行ったり来たりするのは面倒だからだ。

田中秀が去った後、藤沢修は松本若子に布団をかけ直し、尋ねた。「胃の調子がどうして悪いんだ?急に痛くなったのはどうしてだ?主治医は誰?」

「多分、このところ食べ物が刺激的すぎて、胃腸に影響が出たんだと思う。そんなに大したことじゃないよ」

松本若子は内心焦りながらも、必死に隠そうとしていた。だが、真実まであと一歩のところまで来ていることがわかっていた。

「前回も病院に来て、今度もまた。同じ症状がどんどんひどくなってるんだ。ちゃんと薬
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