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第016話

「もう少し待とう。昨夜、おばあちゃんは私たちに仲良くするように言っていた。突然離婚を切り出したら、彼女は耐えられないだろう」

松本若子は何か思い出したかのように、補足した。「安心して。いつ話すことになっても、離婚を言い出したのは私だっておばあちゃんに伝えるわ。最初に結婚したのも、彼女の顔を立てるためだったって言うつもり。あなたは私にとてもよくしてくれたけど、あなたと一緒にいても、私は少しも幸せを感じなかったって。あなたのせいじゃなくて、ただ私が別の人を好きだったの。おばあちゃんは私のことをとても大事にしてくれているから、私がそう言えば、きっとあなたを責めることはないはずよ」

離婚するにしても、松本若子の頭の中は、どうすれば藤沢修がおばあちゃんに責められないかでいっぱいだった。

藤沢修はスプーンでお粥をかき混ぜながら、しばらくの間、一口も食べずにいた。彼の口元が少し引きつって、笑っているようにも見えたが、何かを抑えているようにも見えた。

しばらくして、彼は陰鬱な声で言った。「なんだか、それがお前の本心のように聞こえるんだが」

彼は顔を上げ、その瞳にはまるで灼熱の溶岩のような熱が宿っていた。「ずっと俺のことを我慢してきたんだろう?」

「…」

松本若子は服の裾をぎゅっと握りしめ、顔色が次第に悪くなった。

彼女は彼のためを思って言ったことが、彼の口からは、まるで彼女の本音であるかのように曲解されてしまった。

彼はわざと彼女の意図を歪めて、この結婚が当然終わるべきだと思わせようとしているのだろうか?

「どうして答えないんだ?俺のことをずっと我慢してきたのか?」

その一言は前の言葉よりもさらに重く、まるで彼女に答えを迫り、さらにはそれを認めさせようとしているかのようだった。

「私…」

彼女はずっと我慢してきた。

彼に告白するのを我慢してきた。

彼に自分の愛を伝えるのを我慢してきた。

彼が自分にとって唯一の存在であることを伝えるのを我慢してきた。

それもすべて、彼が結婚前に「お前に感情を与えられないし、いつでも離婚する可能性がある」と言ったからだ。

感情が高ぶりすぎたのか、松本若子の胃の中に突然、激しい吐き気がこみ上げてきた。

彼女は急いで椅子から立ち上がり、口を押さえてその場を離れた。

突然の彼女の離席が、すべてを混乱させた。

藤沢修は彼女を追いかけた。「どうしたんだ?」

彼女はこの二日間、いつもと違っていた。

松本若子は一目散に部屋に戻り、ドアを勢いよく閉めて鍵をかけ、そのまま浴室に駆け込んでドアを閉め、トイレの前で吐き始めた。

藤沢修はドアノブを握り、力を入れて引っ張ったが、ドアは施錠されていた。

彼は拳を握りしめ、ドアを何度か叩きながら、「なんで鍵をかけたんだ?開けろ!」と叫んだ。

中で何が起きているのかは分からないが、かすかに物音が聞こえたが、はっきりとはしなかった。

ドンドンドン!

彼はさらに強い力でドアを叩き、その声には苛立ちが混じり始めた。「若子、開けろ!」

しかし、ドアはまだ開く気配はなかった。

藤沢修は我慢の限界に達し、振り返って叫んだ。「執事、鍵を持ってこい!」

すぐに、執事が大量の鍵を持ってきて、その中から正確に部屋の鍵を見つけてドアを開けた。

藤沢修が部屋に飛び込むと、松本若子がベッドの上で布団にくるまって、体を丸めていた。

彼は大股でベッドのそばに座り、布団をめくって彼女の顔を出し、心配そうに問いかけた。「どうしたんだ?」

松本若子は顔色が悪く、病気のように見えた。

「大丈夫。ただ少し疲れただけだから、少し一人で寝たいの」

「病気なのか?」彼は彼女の額に手を伸ばして触れた。

「病気じゃないわ。眠いだけだから、出て行ってくれる?」彼女は彼を強く押しやろうとした。

「病院に行くぞ」藤沢修は彼女の布団をはぎ取ろうとした。

「病院には行かないって言ってるでしょ。私は大丈夫だから、少し寝たいだけ。お願いだから放っておいてくれない?」松本若子の声には焦りが感じられた。

しかし、藤沢修は彼女の布団を勢いよくはぎ取り、彼女を強引に抱きかかえて部屋の外へ連れ出そうとした。

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