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第33話

金原家は風雨にさらされ、評判は地に落ち、成京にある数十軒のエリー家具は客足が途絶えた。

さらに厳しいのは、隼人が手を引いたことで、もし解決策を見つけられなければ、宮沢が最後に投入した資金が尽きた時点で、金原家は終わりを迎えるということだった。

一方で、高城は金原家の劣悪な製品を暴露したことで、世間からの評価を得て、KS WORLDの長らく低迷していた注目度が再び高まった。

「ご指示通り、成谷の辞職後、彼を密かに追跡させていました。やはり、彼と澤驭が裏で接触していたことが判明しましたし、一度や二度ではありませんでした!」

翔太は、桜子の細く白い手を取り、新しく施したワインレッドのネイルに丁寧にケアオイルを塗りながら話した。「やはり、桜子様の洞察力はすごいですね。あの男の考えを完全に見透かしていました」

「彼はホテルを利用して私腹を肥やし、澤驭と共謀していたのだから、二人の結びつきは相当深いようだ」

桜子は笑みを浮かべ、林田のケアに満足していた。

「週末に金原家が記者会見を開く予定だから、その時に君に見せたいよ。どんな悲惨な結果になるかをね」

......

その日、新しいマットレスが届き、桜子は喜び勇んで翔太と共に裏口に行き、納品の確認をした。

「桜子様、こんな雑用は私たちに任せてください。客室部長と私が対応します」林田は柔らかい声でそう言った。

「私はそんなにか弱いお嬢様じゃないわ。私は戦場で銃を撃ったこともある。一度の戦いで、十数人の負傷者を救い、百人以上の命を救ったわ。マットレスの確認くらいで疲れるわけがないでしょう?」

そう言うと、桜子の琉璃のような瞳に一瞬だけ、淡い寂しさがよぎった。

かつてL国の戦場で、彼女は命がけで負傷者を救った。その中には、隼人もいた。

その時、弾丸が飛び交う中で、彼の足と肩に弾が当たり、血の海に倒れた。彼は何度も彼女に逃げるように怒鳴ったが、彼女は絶対に彼と共に戦うと誓ったのだ。

「俺を放っておけ!早く逃げろ!」

「俺はお前に命じる!早く行け!」

「無理よ!たとえここであなたと一緒に死んでも、決して見捨てることはできない!一緒に逃げるの!」

当時、桜子は死を覚悟していた。彼女のようなか弱い女性が、隼人のように背の高い男を戦場から安全地帯まで連れて行くなんて、まるで夢物語のようだった。

その時、彼女は
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