第091話

藤島翔太が篠崎葵を見つめると、彼女は少し照れくさそうに微笑んだ。

その笑顔はとても真剣で、どこか活力に満ちていた。

今日の篠崎葵の仕事は順調だった。もしかすると藤島翔太が新しいパソコンを贈ってくれたおかげかもしれない。彼女の仕事の効率が大幅に上がり、デザイン部門に提出した図面は、デザイナーたちを驚かせるほどだった。

最初は彼女をただの雑用係で、パソコンすら使えない奴だと思っていた彼らは、まさか彼女がこんなに高度な技術を持っているとは夢にも思っていなかった。しかも、図面に付けた注釈は詳細で実用的。

今日、デザイナーたちは篠崎葵にあまり意地悪をしなかった。

彼女は早めに退社し、夏井さんの病室を訪れて世間話をしていた。会話の中で、篠崎葵はこの数日間、藤島翔太が自分に特に親切で、素敵な服を買ってくれただけでなく、高性能なパソコンまで贈ってくれたことを話した。

夏井淑子は篠崎葵の手を握りながら笑顔で言った。「葵ちゃん、前に言ったでしょ。私の息子はいい人なのよ。ただ、少し無口なだけ。でも彼は責任感のある人だからね。お母さんが保証するわ。少しずつ、彼は葵ちゃんのことを好きになるわよ。

どうしてか、分かる？」

篠崎葵は答えが分からず、考え込んでしまった。

藤島翔太が急に態度を変えた理由が知りたかったのだ。

夏井淑子が続いて言った。「翔太はね、誰かが私の設計を引き継いでくれることをずっと望んでいるの。私が建築デザインを大好きなように、そのことに情熱を持つ人をね。もし、そんな女性が現れたら、きっと彼はその人を好きになると思うわ。

長い間、彼が裕福に暮らし、国外に逃れていた時期も、あれほど良い教育を受けられたのは、すべて私が建築デザインの仕事を引き受けて稼いだお金で、彼を養い、その高額な学費を支払ってきたからなのよ」

篠崎葵は何も言わなかったが、やっと理解した。藤島翔太が自分に優しくなったのは、この理由があったからだ。

だからこそ、この瞬間に藤島翔太を見たとき、篠崎葵の心はさらに晴れやかになり、彼に向ける笑顔は心からのものだった。

彼女は、彼が自分を見出してくれた恩に感謝し、彼の才能を見抜く目に感謝し、そして彼が与えてくれた物に感謝していた。

篠崎葵がその甘い笑顔を浮かべるのを見ても、藤島翔太は何も言わなかった。

藤島翔太は依然として無言だったが、篠崎葵は