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第7話

記憶の中からふと戻ると、警察が到着して、私の遺体を運び出そうとしていた。

お父さんは遠くから鼻をつまんで、私の血まみれで蛆がたかる体を嫌悪の目で見つめていた。

警察は証拠の写真を撮り、簡単な検査をしてから私の遺体に白い布をかけた。

そして、そのまま遺体を検死に持ち帰るために台車で運び出そうとした。だけど、白布をかけた遺体が冷哉お父さんのそばを通り過ぎる瞬間、彼の顔にどこか変わった表情が浮かんだ。

お父さんは、何かに引き寄せられるように一歩近づいてきた。そして、布越しに、思わず手を伸ばしそうになった―その先に横たわっているのが、他でもない自分の実の娘だとも知らずに。

彼の指先が布に触れた瞬間、警察官がきっぱりとした声で制した。

「おい、やめろ、何をしてる!」

お父さんは一瞬ハッと我に返って、手を引っ込めた。こうして、彼は最後に私の顔を見るチャンスをまた失ってしまった。

「申し訳ありません、彼、こういう現場は慣れてなくて、驚いてるだけなんです」監督がすぐに近づいて警察に謝り、その場を取り繕った。

警察は彼らを一瞥すると、特に問題がないと判断し、そのまま遺体を運び去っていった。

「若いのに......気の毒に、あれだけ若いとさぞ親御さんも悲しんでるだろうな」後ろのほうで、劇場のスタッフたちが私の遺体を指差し、ささやきあっているのが聞こえた。

運ばれていく私の遺体を目で追うように、お父さんはふいに苦しそうに胸を押さえ、深く息を吸い込んでいた。

その様子を、私はぼんやりと見ていた。

......血のつながりって、こうやって心に響くものなのかな。だけど、もうどうでもいい。だって私は、もうこの世にはいないのだから。
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