共有

第4話

本当なら、私はもっと長く生きられたはずだった。治療費さえあれば......だけど、それにはとてもたくさんのお金が必要だった。

ある日、突然鼻血が止まらなくなって病院へ行った。検査の結果、医者は冷たく告げた。「もう手遅れだ」って。体のあちこちが痛む理由も、そのときやっと分かった。だから、ここ数年体調が悪くて当然だったんだ......

でも、小さい頃にできた嫌な記憶がずっと引っかかって、私は早めに病院で検査を受けることができなかった。そのせいで、自分の病気がここまで悪化してしまったんだ。

昔からお父さんが美羽ばかりをかわいがっていたせいで、私は気を使って、美羽の真似をするようになった。少しでもお父さんの関心を引けるなら、それだけで満足だった。

もちろん、美羽はすぐに私の変化に気づいたみたい。彼女にとって私は、ただの失敗作......何をやっても不格好で、笑いものにするしかない存在だった。

だけど彼女は気づいていないふりをして、最後には私に思いっきり痛い目を見せた。

ある日、美羽が病気になったとき、お父さんはとても優しく美羽を看病していた。それを見た私は、お父さんに同じことをしてもらいたくて、熱があるふりをしてみた。

その日、お父さんが初めて私に優しくしてくれた。美羽が家に来てから初めて、私を優しく抱きかかえて病院に連れて行ってくれたんだ。私のおでこにそっと手を当てて、熱を感じながら大丈夫かって聞いてくれた。

だけどお父さんが一瞬視線をそらした隙に、私は体温計が嘘を暴いてしまわないように、そっと温かい水の中に体温計をつけて、数字を上げようとした。

突然、美羽が私の後ろに現れて、私の手にある体温計をぐっと掴んだ。そして得意げにお父さんに言いつける。

「詩凜ちゃん、ダメだよ、私の真似して装病なんて......!

詩凜ちゃん......そんな嘘つくのは良くないよ。お姉さんとして、ちゃんと見過ごせないな!」

幼かった私は嘘をつくのも下手で、その場で固まってしまった。

お父さんは、すぐに私が嘘をついていることに気づいたみたいで、私を見る目に嫌悪の色を浮かべていた。

「お父さん......違うの......」

泣きそうな声で何とか説明しようとしたけど、喉がつかえたように声が出ない。だってお父さんが私を見るその目が、これまでで一番冷たいものだったから。

「詩凜、成長したな......

お前もあの女と同じ、ずる賢いヤツだってわけか。小さいくせに俺を騙そうって魂胆なのか?

それで、いくら欲しいんだ......?」

全身の血が一瞬で冷たくなるような気がした。

「違うの......お父さん、ただ少しでも私のことを見てほしかっただけ、抱きしめてほしかっただけなの......!

お金が欲しかったわけじゃない!」

必死で泣いても、伝えられるのはただの悔しさだけ。お父さんは失望したように私をしばらく見つめた後、低くつぶやいた。

「お前はあの女とは違うと思ってたが......母親が母親なら、娘も娘だな」

そして美羽を抱き上げると、そのまま大股で去って行った。病院の待合室に取り残された私は、ひとりで泣き続けて、気づけば朝になっていた。

それ以来、私は病院が怖くなった。病院は私にとって、絶対に触れたくない痛みの記憶が詰まった場所になってしまった。

それと同じ頃から、お父さんは私にどんどん冷たくなっていった。私が必死に勉強して成績一位を取っても、「どうせ見せかけだけだ」と言われたし、私が高熱を出しても病院に行きたくないと言えば、「同情を引こうとしている」と決めつけられた。

何をやっても、お父さんにとってはただの失望でしかなかったんだ。

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status