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第14話

「まだ用事があるので、食事はまた今度にするわ」

凛は悟と仲が良いため、断る時もにこやかに彼の気を損ねないようにしていた。

悟は、彼女の手に高級ジュエリーの特注品の箱があるのを見て、本当に用事があるのだと察した。

彼はそれを了承し、まだ話そうとしたが、凛はもう海斗の前を通り過ぎ、まっすぐに店を出ていった。

その間、一度も海斗に目を向けることはなかった。

突然、周りの空気が重くなった。悟はこっそり海斗の顔色を伺いながら、ぎこちなくフォローした。「あの……海斗さん、凛さんは多分、海斗さんに気づいてなかったんじゃないかな……気にしないでください……」

悟が言わなければ良かったのに、その言葉を聞いて、海斗の顔はさらに険しくなった。

彼は咳払いをして、もう口を開くことはなかった。

しかし心の中ではこう思った。凛さん、今回は本当に強気だな!

「お客様、まだお買い上げになりますか?」

海斗は冷たく顔を上げて言った。「買わないって言ってないだろう?一番高いものを出してくれ——」

彼女が気にしなくても、気にする人はいるんだからな!

……

パーティーの場所は雲木町の一軒家で、凛が到着したときには、すでに多くの人が来ていた。

彼女を認識した人々の視線が微妙に変わった。

かつては、海斗に連れられてこうした場に出入りしていたため、顔なじみだった。

彼女の名前が「雨宮凛」であることは知られていなかったが、「入江海斗の彼女」という肩書きは広く知られていた。

彼女はまるで、シンデレラのようだった。

しかし、最近では二人が別れたという噂が広まっており、この場に一人で現れた凛の姿が、その噂を裏付ける形となった。

それゆえに、人々の視線が微妙になった。

もうすぐ王妃になりかけていたシンデレラが、元の姿に戻されたのか?

六年間の努力が無駄になり、捨てられた妻になってしまった。

これほど劇的な展開が他にあるだろうか?

凛はそんな視線を気にせず、すみれを見つけて、直接ジュエリーを手渡した。

「凛ちゃん、少し残って遊んでいかない?今日の料理はなかなか美味しいわよ」

「いいえ、大丈夫。お酒は控えめにして、帰るときは気をつけてね」

「分かったわ」すみれもそれ以上は勧めなかった。あの人たちの心境は彼女にはよくわかっている。凛ちゃんが残ってもただ気まずいだけだ。「気を付
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