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第20話

昼食を済ませた後、すみれは動物ショーのチケットを2枚購入し、興奮した様子で凛をイルカショーに連れて行こうとした。

人混みをかき分けて、二人は流れに沿って南西の動物ショー館へ向かった。

館内は冷房が効いていて、外の灼熱の暑さと比べると、まるで別世界のような心地よさがあった。

凛は動物のパフォーマンスにはあまり興味がなかったが、すみれはイルカが大好きで、インタラクティブなセッションが始まると、カメラを凛に渡して写真を撮ってもらった。

すみれの笑顔につられて、凛も思わず口元に微笑が浮かんだ。

30分ほどしてショーが終了すると、凛はバッグをすみれに預け、トイレに行くためその場を離れた。

曲がり角を過ぎたところで、手洗い場で手を洗っている時見晴香の姿が目に入った。

凛は一瞬立ち止まり、彼女を無視するようにそのまま仕切りに向かって歩き続けた。

用を済ませて出てくると、晴香はまだその場に立っており、どうやら待っていたようだ。

凛は彼女を無視したまま、ただ手を洗うことに集中した。

水の音が響く中、互いは黙っていたが、場の空気は次第に緊張感を帯びてきた。

ふと顔を上げた瞬間、凛は晴香と目が合ったが、すぐにそらし、まるで彼女が見知らぬ人であるかのように振る舞った。

その瞬間、晴香は微笑み、長袖の下からちらりと見えるブレスレットに視線を向けながら言った。「凛さん、偶然ですね」

凛は返事をしなかった。

晴香はそれを気にせず、「最近どうですか?」と続けた。

凛は軽く微笑んで、淡々と答えた。「まあ、悪くないわね」

晴香の瞳が微かに揺れ、彼女の落ち着きが本物なのか、それとも演技なのかを見極めようとするかのようだった。

数秒後、彼女は微笑みながら続けた。「本当ですか?別荘を引き払うのは大変だったでしょう?」

凛は答えた。「ご心配には及びません」

「そういえば、凛さんには感謝しなければなりません。本当ですよ」と言いながら、晴香の目には涙が浮かんでいた。彼女の無邪気で幼い顔と相まって、清純で愛らしく、哀れを誘う。「もし凛さんが身を引いてくれなかったら、今頃海斗さんはまだ私一人のものじゃないかもしれません」

凛は何も言わず、ただ静かに手を洗い続けた。

指の先まで泡を丁寧に洗い流しながら、彼女の言葉に耳を傾けていた。

「さっきの風船、凛さんも見ましたよね?今日は
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