第13話

名門同士の結婚では、男性が外で愛人を持つことは珍しくない。家の中の正妻との関係を維持していれば、外の遊び相手をどう扱おうと構わないというわけだ。

彼女は母親として、あまり口出しをしない。

今日、正式に雨宮凛へ一つの約束を与えた。

だが、入江美琴が期待していた感謝の言葉や涙ぐむ場面は現れず、返ってきたのは冷ややかな笑い声だった。

凛は言った。「入江さん、施しなんて、他の誰かにお譲りください。私には不要です。それと、海斗とはすでに別れました。これから会うことがあっても、私たちは他人として接するべきでしょう」

かつては、彼女も海斗のためなら、美琴の無礼を飲み込んできた。

美琴は彼女の学歴が低いこと、留学経験がないこと、そして卒業後に安定した職業を持っていないことを嫌悪していた。結局のところ、自分の大事な息子にはふさわしくないと判断していたのだ。

以前なら、凛はこの未来の義母を少しでも喜ばせようと努めていただろう。しかし今では、海斗本人すら彼女にとって不要の存在となった。ましてや、彼の母親など、何の価値があるのだろうか？

それが目の前で調子に乗っているなんて、我慢できるはずがない。

「そういえば、入江さんに一つアドバイスを差し上げましょう」

美琴は不思議に思った。「？」

「今後は、あまり言葉を選ばないと危険です。——殴られることになりますから」凛は微笑みながらそう言った。

「それと、猿が服を着たところで所詮は猿って話は、『沐猴にして冠す』ということわざです。覚えておくといいですよ」

言い終わると、彼女は優雅に振り返り、図書館に入っていった。

美琴はその場で固まり、目を見開いた。「今、何ですって？！あの子が私にこんな口の利き方をするなんて！！彼女、何様のつもりなの？！それでも入江家に嫁ぐつもりなのかしら？！」

那月は母親に腕を掴まれ、激しく揺さぶられながらようやく我に返った。「お母さん、さっき凛が……お兄ちゃんと別れたって言ったんだよ？」

「ふん、まさか信じてしまったのか？」

「まあ、そうよね……彼女、何度も別れたって言ってたけど、本当に別れたことは一度もないし」

結局、誰もが知っていることだ。雨宮凛は入江海斗を狂ったように愛していて、主人に忠実な犬のように、どれだけ追い払おうとしても無駄だ。

那月は目線を戻し、「お母さん、今日の大事な予