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第16話

すみれは刺身が好きで、新鮮なサーモンと定番の海老などを注文した。

凛は生ものが苦手なので、ラーメン一杯といなり寿司一皿を頼んだ。

ラーメンの味は普通だったが、野菜がたくさん入っているのが良かった。

すみれは彼女が調理済みの料理ばかり食べているのを見て、からかうように言った。「このサーモンは肉質がとても柔らかいよ。本当に試してみないの?もしかしたら新しい世界の扉が開けるかもね」

凛は軽く笑いながら言った。「知ってるでしょう、生ものはどうしても心理的に無理なの。私はラーメンを食べておくわ」

「本当に変わらないんだから」

すみれは知り合ったばかりの頃から、凛が好きなものに対して一途であることに気づいた。同様に、嫌いなものに対しても同じだ。

「そういえば、最近忙しくてスパにも行ってないの。手がカサカサになってきたわ」

ここまで話して、またため息をつき、愚痴をこぼした。「全部お父さんのせいだよ。最近ずっとお見合いを急かしてくるんだ。お母さんも止めるどころか、お父さんの味方をして一緒に私を説得しようとしてるんだから」

「別に一人じゃ生活か厳しいわけじゃないのに、そんなに急かす必要ある?」

「それに、陽一兄さんだってあんなに優秀なのに、まだ結婚してないんだから、私が急ぐ必要なんてないわよ……」

陽一のことを思い出すと、凛は、彼らが隣人でありながらお互い忙しくしていて、前回一緒に火鍋を食べたとき以来、サンドイッチを一度届けただけで、それ以外は会っていないことに気づいた。

すみれは彼女のぼんやりした様子に気づかず、いなり寿司を一口食べて、彼らが前回会った時のことを思い出して言った。

「陽一兄さんと一緒に大谷先生に会いに行ったんでしょ?その後どうだったの?」

凛は頭を下げて麺をすすり、少し咀嚼した後、ようやく答えた。「……そんな感じかな。教授が私のために枠を取ってくれたから、今年の大学院入試は絶対に合格しないといけないわ」

すみれは彼女の言葉に拍手し、「すごいじゃない!その自信に満ちた顔が好きなのよ!」と言った。

「じゃあ、週末にご褒美として、どこかに連れて行ってあげるわ」

凛は聞いた。「どこ?」

「行けば分かるって」

……

凛の強い要望で、二人は食事を終えた後、すみれが車で彼女を図書館に送った。

まだ時間が早かったので、もう少し勉強することが
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