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第17話

彼は眼鏡を押し上げて言った。「物理は一朝一夕で成し遂げられるものではない。それには独自のリズムと道筋があり、あなたが『止めろ』と言っても変えられるものではない」

責任者は気まずそうに言った。「ただ言ってみただけだよ……」

二人は不機嫌なまま別れた。陽一が振り返ると、凛がにこにこしながら手を振っていた。「久しぶりですね、隣人さん」

並んで家に帰る道を歩きながら、凛は先ほどのことを避け、ただ気軽に話していた。

「前回はありがとうございました。この数日、問題を解くのがうまくいっています」

陽一は功績を認めずに言った。「それは君の頭がいいからさ。最近、大谷先生に会った?」

凛は手を背中に回し、足元の石を見ながらゆっくりと前進した。「いいえ、電話で何度か話しただけです。先生は体調がかなり回復して、数日後には学校に戻れます」

陽一は頷いた。「それなら良かった。先生はいつも自分の授業に責任感を持ってるから、たった数日休んだだけでも、きっと落ち着かないんだろう」

日が沈みかけ、自転車がぐらつきながら通り過ぎた。

凛はちょうど不安定な石板を踏んで、バランスを崩し、倒れそうになり、自転車にぶつかりかけた。

その瞬間、陽一が手を伸ばし、彼女の細い手首をしっかりと掴み、軽く力を入れて、彼女の体全体を引き寄せた。こうして衝突をギリギリで避けることができた。

「大丈夫か?」

彼の温かい指が袖越しに彼女の手首をしっかりと握り、夏服の薄さ越しに温もりが伝わってきた。凛の耳は一瞬で真っ赤になった。

「大丈夫です、ありがとうございます」

二人はあまりにも近く、呼吸が触れ合うほどだった。これに気づいた凛は、少し後退した。

陽一も気づき、手を離した。

その後、二人は無言のままだった。

家に着き、別れの挨拶を交わし、それぞれ家に入った。

ドアを閉めると、先ほどの光景が凛の頭の中でフラッシュバックし、細かい部分が無意識に拡大された。

彼の温かい指先、微かに感じたミントの香り、そして暗く深い瞳……

凛はうつむいて手首を揉んだ。そこはまるで火傷したかのように熱かった。

……

実験室から戻り、また誰かと議論した後、陽一は汗をかいて少し不快だった。

彼はスリッパに履き替え、シャワーを浴びようと準備を始めた。

机の上にあるスマートフォンを何気なく手に取り、まずは出前を頼も
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