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第9話

田村がすぐに車を出し、私を市内へと向かわせた。道中、彼は一枚のプリント用紙を私に手渡した。

「これ、何?」

「オノクの資料だ。さっき調べたんだが、君に渡すのが遅くなった。君が久能に関わる人物を調べてほしいと言ったからな」

私は頷き、その紙を見つめた。それにはオノクの身分証と顔写真のコピーが載っていたがこれだけでは何も見えてこない。

唯一知らなかったのは、オノクのフルネームがオノク・オウハウで、英語表記がonuk ouhaであることだった。

四十分後、田村は私をある和食店へと連れて行った。この名前は以前に資料で見かけたことがあり、つばさが死の直前に最後に訪れた店だった。私は田村に玄関で待つよう指示し一人で店内へと入った。

案内係により個室に通されると、オノクは既に席に座り、少しずつお酒を口にしていた。私が来ると、彼は軽く手を挙げて座るよう促した。

「君、日本語がうまいんだな」と私は冗談を交わした。

「それは重要ではない」

私はさらに話そうとしたが、個室のドアが開き、入ってきたのは義雄だった。義雄は私を見ると少し驚きながらも席に着いた。

席につくと、低い声で尋ねた。「俺をここに呼んだ理由は何だ?」

オノクの頬は少し赤みを帯び、少し酔った様子だった。「森田叔父さん、つばさを殺したのは僕」

義雄は腕を組み、低い声で言った。「武、あの時、久能が見逃したお前を、俺が見つけて殺すべきだったんだ。今さらつばさを殺して、よくもここへ来れたものだ」

オノクは微笑み、少し狂ったように笑い始めた。「ははは……森田叔父さん、何を言ってるのか?僕には何のことやら、武って誰のこと?」

「ちょっと教えてやろうか。俺が誰かを思い出させてやるよ」

「1999年12月4日、お前は酔って、16歳の高校生をわいせつした。つばさが桜子を汚したのも、お前からの遺伝かもしれないな。だが、あいつはお前ほど残酷じゃなかった。お前のように、その一家を皆殺しにしなかった」

オノクの言葉に、義雄の顔色が変わった。「お前……お前は誰だ?」

オノクは笑みを浮かべ続けた。「2000年2月5日、大晦日の夜、酔って妊婦を襲っただろう。その妊婦と胎児はその場で死んだ」

オノクはあまりに冷淡に、残酷な事実を淡々と話した。まるでお酒の味を語るように。

「森田おばさんがあんたのこんな獣にも劣る所業のせい
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