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第11話

以前、田村に武の戸籍だけを調べてもらっていたが、彼の詳細な記録には目を通していなかった。そして実際に武の記録を目にした時、私は驚いた。記録写真に写っている武が、はおと瓜二つだったからだ。

つばさが入院する際に病院で行われた身体検査で、彼の体内にシルデナフィルの成分が残留していたことが発見された。通称「バイアグラ」と呼ばれる薬だ。

そして、最後のピースが埋まったのは、オーク・オウハウのパスポートを見たときだった。

「onuk oha」。それは、久能はおの名前「hao kuno」のローマじを逆さにしたものであり、背筋が冷たくなるのを感じた。

全てが繋がり、完全なタイムラインが頭に浮かんだ。

1992年に義雄がはおの両親を殺害し、その後彼を引き取り、森田家の犯罪組織の首領となった。

はおは犯罪活動の中で両親の死の真相を知り、復讐の機会を狙うようになった。そして、彼は武と出会った。

武は彼とほとんど瓜二つの容姿をしていた。それを知ったはおは密かに計画を立て、武を自分の身代わりとして利用しようとした。

電信課の同僚によると、二人の間には一切の通信記録がなく、二人は全くの無連絡で計画を遂行したことになった。この計画を実現するには、武に並外れた信念と決意が必要だった。

そして、その信念と決意をもたらしたのが「憎しみ」だった。

はおはつばさにバイアグラを飲ませて桜子を猥褻させ、それが武に森田家への絶対的な憎しみを抱かせることとなった。これがオノクが武に「ごめん」と伝えるよう私に頼んだ理由でもあった。

武は出所後、はおの身代わりとなり、身の安全を守るために自ら小指を切り落とした。だから、私が偽のはおが真夏に手袋をしていて、しきりに小指に触れていたのは、彼が義指を弄っていたからで、その小指こそ、武の父に送りつけられたものだった。

義雄は自責の念からはおと目を合わせることができず、またつばさが事件を起こしても彼に直接関わることがなかったため、武の容姿を知る機会もなかったのだ。

そして本物のはおは整形手術を受け、さらに喉の手術で声も変えた。

計画は順調に進み、本物のはおはつばさに接近し、彼の唯一の友人となった。

そして、父親の命日に、義雄がかつて彼の父を殺した手口で、つばさを殺害し、義雄に恐怖を与えたのだ。

義雄のような男が唯一恐れるのは、幽霊や神仏だけかも
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