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第3話

まさか犯人は義雄を狙っていたのか?とはいえ、もし犯人の目的が義雄なら、彼を直接殺すこともできたはずだ。その手段を持っているならなおさらだが、そうはしなかったのが疑問だ。

午前中、オフィスで頭を悩ませていたが結論にたどり着けず、昼食の時間が近づいた頃、田村が急いでオフィスに入ってきて私を応接室に連れて行った。

応接室に入るとこの事件を担当している他の刑事たちがすでに集まっており、そこで待っていたのは、ホテル前で見かけたあの水色のシャツを着た若い男だった。

部屋に入ると他の刑事たちが私を一瞥したが、私は気にせずに席に着いた。田村も私の隣に腰を下ろした。

「彼は誰なんだ?」と私は小声で田村に尋ねた。

「彼がつばさの友人、オノク」と田村が答えた。

「オノクさん、全員揃いましたので、何か手がかりがあればお話しください」と一人の刑事が言った。

オノクは頷き、話を始めた。

「つばさは中学三年生の頃、同じクラスの女子に片思いしていたそうです。その女子が好きだったのは彼だけではなく、岡本武という悪ガキも同じ相手に気があった。どういうわけかつばさの気持ちが武にバレてしまい、彼はつばさに絡み始めました」

「つばさは何度か殴られ、耐えられなくなって、父親に頼んで武を懲らしめてもらうことにしました。武が怯えるかと思いきや、逆に恨みを抱き、ある雨の日に男子トイレでつばさを待ち伏せして半殺しにしたんです」

「その事件で武は少年院に送られましたが、つばさもそれ以降、人と関わるのが怖くなり、誰とも接触を避けるようになりました。僕は留学中にルームメイトになり、避けられない状況で親しくなった唯一の友人です」

話を聞き終えた私は顎に手をやりながら尋ねた。「つまり?」

「つばさはそれ以来、僕以外の誰ともほとんど関わりがなかったので、武が恨みを晴らすために戻ってきた可能性があると思うんです」

「分かりました。貴重な情報をありがとうございます」と刑事の一人が言った。

「僕はただ、つばさにとっての唯一の友人として、真実を突き止めていただきたいだけです」とオノクは言い残して去っていった。

オノクが帰ると他の刑事たちはあまり興味を示さず、「古臭い話を持ち出しやがって」と小声で不満を漏らしていた。誰もこの情報を真面目に捜査する気はなさそうだった。

正直、私もオノクの話をそれほど真に受けていたわけではないが、手がかりがない以上試しに調べてみる価値はあるかもしれない。

そこで田村に、戸籍課で1986年生まれの「岡本武」という名で少年院に入っていた人物を調べてもらうことにした。

約30分後、結果が出た。該当者はただ一人だった。

しかし、その人は奇妙なことに、戸籍が抹消されていないにもかかわらず、2000年以降、進学や就職、医療記録が一切存在せず、まるでこの世からすべての痕跡が消されているようだった。

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