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第5話

田村はそれを見て驚き、私も眉をひそめた。

「これは……」

武の父親は目を赤くし、歯を食いしばって涙をこらえていた。「その時、俺たちに送られてきたのはこの指一本だけで、驚いてすぐ警察に通報したんだ」

「だが、警察はどうしても事件として扱ってくれなかった。裏で義雄が邪魔していることはわかっていた。武もきっとあいつにやられたんだ」

「武は生死もわからないままで、俺たちも彼の戸籍をそのままにしてある」

「そして妻は……耐えきれず、川に身を投げたんだ……」武の父親は声を詰まらせ断続的に話した。

「この指が武さんのものだと確認できたのですか?」と私は尋ねた。

「そ、その時には無理だった……その後、俺のDNAと指で鑑定してもらって……武のものだってわかったんだ……」

老人は歯を食いしばったまま、涙を堪えきれずこぼし落ちてしまった。その姿はまるで子供が泣いているようだった。

彼はまだせいぜい50歳前後のはずだが、外見はもう60歳を超えているように見えた。

彼をここまで変えてしまった苦痛がどれほどのものか想像もできなかった。

隣で田村も目を潤ませていたが、私は深く眉を寄せたままだった。

どうやら、武に関する手がかりはここで途絶えたようだ。そして、どうして警察署の者たちがこの件を誰も調べたがらないのか理解できた気がした。

「武の件、警察署のみんなは知っているか?」武の家を出た後、私は田村に尋ねた。

田村はしばらく沈黙してから、ようやく口を開いた。「もう10年近く前のことだし、詳しいことは知らないけど、仮に知らなくても、誰も森田家に関わることは調べたがらないよ」

私は数秒考え込んだ。

「武が通っていた中学校に行ってみよう」と私は田村に言った。

武に関する手がかりは断たれたが、当時、彼がつばさを殴って重傷を負わせたのは学校内での出来事だった。まだ知っている人がいるかもしれないし、そこに行けば新しい手がかりが見つかるかもしれない。

まず私たちは警察署に戻り、当時の記録を調べて、武の担任教師と最初に武がつばさを殴った現場を目撃した清掃員の情報を見つけた。

それから学校に向かったが、武の当時の担任は今や校長になっていた。

彼女は最初私たちにとても親切だったが、武の話をした途端、
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