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第7話

「そうだ」と言いながら、彼は手を振って私に座るよう促した。「警察が俺に用があるのか?」

私はその手招きを無視して聞いた。「岡本武のことを知っているか?」

彼は一瞬驚いたがすぐに平静を取り戻した。「知らないね」

その一瞬の驚きは、明らかに無意識の反応だった。「岡本武」という名前に反応していたのだから、何らかの形で彼が武を知っているのは間違いない。

私は深追いせず、続けて尋ねた。「じゃあ、森田義雄のことは知っているか?」

彼は笑って答えた。「もちろん知ってるさ。誰だって知ってるだろう?ただ、向こうは俺のことなんか知らないけどな」

彼が話す間、ある仕草が気になった。真夏の八月だというのに、彼は右手に革の手袋をはめていて、話しながらずっと左手の人差し指と親指で手袋をした右手の小指を触っていた。この仕草には何か特別な意味があるのだろうか?

「他に聞きたいことはあるか?」と、はおが言った。

「いや、ご協力に感謝するよ」と言って、私は立ち去ろうとした。

「待てよ」はおが呼び止めた。

振り返ると、彼が古い金属製のライターを投げてよこした。「よくも俺のところに一人で来れたな。度胸があるじゃないか。俺は度胸のある奴が好きだ。これはお前にやるよ」

「タバコは吸わないんだ」

「関係ねぇさ。どうせそのうち必要になるからな」

メイフラワーバーを出て、タクシーでホテルへ戻った。

はおの態度から見て、彼と武には何かしらの関係があることは明白だった。田村が言っていたように、はおは義雄の人間だと言われていたが、彼の答えには一切の感情がなかったため、確証は得られなかった。

翌朝、私は警察署に着くなり田村に頼んで86年生まれの久能はおという人物の戸籍情報と資料をすべて調べてもらった。

田村が出かけようとした瞬間、私は彼を呼び止めた。なぜか、「すべてはあのオノクが私を導いているのではないか」という考えが頭をよぎったからだ。さもなければ、どうして彼がこんな古い事件である武のことを話したのか?

「田村、ついでにオノクの資料も調べてくれ」

しばらくして田村が数枚のプリントアウトを私のデスクに置いた。

久能はおの資料によると、彼は1999年に義雄に養子として迎えられ、その後は武と同様に、社会的な記録が一切な
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