優子があの人のことを話す声はとても落ち着いていて、もうすっかり考えがまとまり、気にしないように見えた。 しかし悠斗は心の中でよくわかっていた。本当に愛した人のことを、そう簡単に気にかけなくなるはずがなかった。優子はただ傷を隠しているだけで、誰もいないときにこっそりとその傷を舐めているのだ。 悠斗はあまり詳しく聞かず、話題を変えた。「君の父親の手術費用、まだ払っていないって知ってる。友達として、まずは僕がお金を貸すよ。後で返してくれればいい」 彼は優子が一人で金を稼ぐのが大変なことを知っており、何度も手を差し伸べようとしたが、優子はそれを拒んでいた。 今回も優子は首を振って「いいの」と答えた。 「優子、お父さんの病気が重いんだ。その人間のクズに侮辱されたのに、まだ僕の好意を受け入れてくれないのか?僕は何も条件はつけない、ただ助けたいだけだよ。僕の家の状況は佐藤家ほどではないにしても、普通の家庭ではないんだから、このくらいのお金は問題ないんだ。気にしないで」 優子はコップを両手で持ちながらゆっくりと彼の方を見た。その顔色は青白く、見るからに心が痛む。 「先輩はいい人だけど、私、お金を返せるほど長くは生きられません」 この情も、このお金も、彼女には返すことができない。 彼女は点滴の液体が底をつきかけるのを見て、思い切って点滴を抜いた。止血用の綿棒もないので、血が流れ出た。 それでも彼女は何も気にする様子もなく、立ち上がってコートを手に取った。「お金のことは心配しないでください。私が彼と離婚届を出したら、彼が2億をくれると言ってました。お父さんは昨日手術を受けたんです。病院に行って様子を見てきます」 優子の性格は頑固で、天才と称される彼女がどうして学業を放棄して結婚したのか、当時誰もが理解できなかった。 優子の先生も、悠斗と食事をするたびに「こんなに賢い子がもったいないね。一体誰と結婚したんだろう」と残念がっていた。 優子は悠斗が送りたいと言い出すのを予想していたのか、スマホを上げて「私が呼んだ車が来ました」と言った。 悠斗が言おうとした言葉をそっと遮った。 優子はコートを着て、車のドアハンドルに手をかけたとき、悠斗が口を開いた。「優子、あの時、すべてを放棄して彼と結婚したことを後悔し
優子は顔を伏せて白い紙を一目見た。そこには墓地の住所がはっきりと書かれていた。 まさか彼の妹はもう亡くなっているの?でも、彼の妹の死が私の父と何の関係があるの?優子は信也のことをよく理解していた。彼が少女を傷つけるような人ではないと確信していた。 優子は二人からこれ以上情報を引き出すことは難しいと悟り、二人をこれ以上困らせまいと、佐藤家へと静かに向かった。 再び訪れた馴染みのある場所で、優子は感慨深く思いを馳せた。 運転手の森本進は礼儀正しく尋ねた。「奥様、車から降りられますか?」 「いえ、ここで待ちますので」と優子は答えた。 彼女と峻介の間に残されたのは離婚だけで、これ以上トラブルを起こす気はなかった。この場所の一木一草が二人の思い出を負っているから、さらに感情を揺さぶることは望まなかった。 それを悔やむなら、かつて彼が彼女に対してあまりにも良くしてくれたことを悔やむべきだ。 峻介が以前に比べて冷たくなっていくたびに、優子は彼がかつて示した優しさを常に思い出していた。 本来なら嫌悪すべき人なのに、彼女はどうしても心を鬼にすることができなかった。 車はエンジンを切らず、絶え間なく暖房を提供していた。車内には優子一人だけが残され、彼女の胃が痛み始めた。彼女は体を丸め、小さなエビのようにひざを抱えて座席に蹲って、夜明けを待った。 冬の夜は日が暮れるのは早いが、夜が明けるのも遅い。7時過ぎでもまだ明るくなっていなかった。空は霧でぼんやりとしていた。 庭の銀杏の木の葉はとっくに落ちていた。彼女の思考は過去に飛んでいった。金色の果実が熟す季節、彼女が銀杏で煮たチキンスープを食べたがっていたら、彼は庭の高さ十数メートルの銀杏の木に登り、彼女のために実を振り落としてくれた。 青緑の葉がシャラシャラと落ち、まるで彼女に金色の雨を降らせてくれたようだった。 その頃の峻介は人懐こく、料理が上手で、彼女をとても可愛がっていた。 優子は思いを馳せながら、いつの間にかその木の下まで一人で歩いていた。銀杏の木はまだそこにあったが、今や事も人も変わってしまっていた。 その木の葉はすでに落ち、枝にはほんの数枚の枯葉がひっそりと揺れていた。まるで今の優子と峻介の関係のように、危うく崩れかけていた。
車内は静まり返っていた。里美が焦って大きな声で話す声が聞こえ、優子ははっきりと「拓海」という名前を聞き取った。 優子が妊娠検査報告書を手に入れたあの日、満ち溢れる希望を抱いて峻介の胸の中に駆け込んだ。「峻介、お父さんになるんだよ!私たちに子どもができたの!子どもの名前も考えたんだ。女の子なら佐藤千尋、男の子なら佐藤拓海って名付けるつもり。どう思う?」 優子は聞き間違いだと思いたかった。しかし、峻介は彼女の視線を避けずに、はっきりと答えた。「彼の名前は佐藤拓海だ」 「この野郎!」 優子は手を振り上げて峻介に平手打ちをした。今回、彼は避けなかったので、彼女は見事に打ち当てた。 「なんで里美が産んだ子に、私たちの子の名前を使うのよ!」 子どもは優子にとって最後の防衛線だった。涙はダムが決壊したように溢れ出した。優子は狂ったように彼に飛びかかり、「なんで悪魔みたいなことするの?なんで神様は私の子を奪ったの?なんで死んだのがあなたじゃないの?」 理性を失った優子は峻介の体に何度も猛烈に拳を振るった。「彼にその名前を名乗る資格はない!」 峻介は彼女の両手を掴みながら森本昇に命じた。「明海別荘に行け」 優子の感情はさらに昂ぶった。「もうすぐ役所に着くんだから、行くなら離婚してからにして!」 「子どもの高熱が下がらないんだ。すぐに行くべきだ」 優子は怒りを込めて言った。「私の父はまだ病院で昏睡状態だし、病院に医療費も払ってないの!あなたの子供の命は重要で、私の父の命はどうでもいいの?」 峻介は信也の名前が出ると、顔に冷たさがあふれた。「お前の父親と拓海を比べられると思ってるのか?」 優子はまた飛びかかってビンタを食らわそうとしたが、彼女の両手は峻介にがっちりと掴まれていた。峻介は怒鳴った。「うるさい!」 優子は車がUターンするのを見た。この交差点を越えれば役所に着くはずだった。 優子がさらに抵抗しないように、峻介は彼女を強く抱きしめた。かつて優子が最も安らぎを感じた抱擁が、今では彼女を縛り付けているのだ。 峻介の力は強く、彼女は全く抵抗できず、ただ怒りに任せて叫んだ。「あなたはそんなに里美のことが好きなの?」 峻介は少し呆然として、優子を抱きしめた瞬間に彼女がどれほどやせ細ったかに気づいた。1年前とは明らかに違う彼
優子はしばらくぼちぼちと話し続けた後に立ち去った。彼女には悲しむ時間がなかった。手に入れた写真から更なる調査を続けていく。 彼女の父が接触していた女性は大抵会社にいたので、会社の人間から調べ始めようと思った時、電話がかかってきた。 それは彼女の父が昔支援していた山間部の子供のうちの一人である、田中健一からだった。彼の声は少し急いでいる様子だった。「優子さん、帰国したばかりですが、高橋さんが重病だと聞きました。彼は大丈夫ですか?」 「ご心配ありがとうございます。父はまだ病院で治療を受けています」 「ああ、高橋さんはいい人なのに、神様はどうしてそんなことを......彼が私たちを支援してくれなければ、山から出てこれたかどうか......今の生活があるとは思えません」 優子の頭にふと思いがよぎった。父が何年も前から貧しい山間部の子供たちの教育を支援していたが、もし佐藤葵が誘拐され、深山にいたとしたら、それが理由で父と知り合った可能性はあるだろうか。 「健一さん、父が支援していた学生たちを知っていますか?」 「私はずっと高橋さんのために彼らと連絡を取っていました。ほとんどが知り合いですが、この数年間、海外にいたので連絡が途絶えてしまいました。優子さんが何か助けが必要なら、財力でも精力でも、条件なしで応じますよ」 優子は希望の糸を掴んだように感じ、すぐに言った。「こちらに写真があるんですが、見てもらって、父が以前支援していた人かどうか教えてもらえますか?」 「いいですよ、優子さん」 健一に写真を送った約半時間後、彼からいくつかの情報が送られてきた。写真の女の子は瞳が明るく、歯が白かった。特に目が非常に峻介に似ており、墓碑に刻まれた少女とも少し似ていた。 この女の子の名前は辻本恵で、貧しい山から出てきた子らしい。信也は12年前から彼女を支援し始めた。彼女は小さい頃から成績が優秀で、高校の時には国内外のトップ大学から奨学金のオファーがたくさんあったが、彼女は国内の大学に進学することを選んだ。 きっと、彼女が優子が探していた人だ。優子は急いで健一を呼び出した。 待ち合わせ場所はカフェだった。 健一は時間通りに来た。優子は10年前に彼に一度会ったことがあるが、その時はまだ青臭い青年だった。今はもう上場
優子の病状が更に悪化することを防ぐ為に、中村悠斗は第一期の化学療法を明後日にした。 化学療法の副作用は沢山あり、治療が終わってからの二週間は体が極度に弱まり、激しく脱毛する為、優子は手元の仕事を前もって片付けなければならなかった。 高橋信也はまだ目が覚める兆候はないが、幸い治療費は彼女が心配する必要はなく、一部の費用を支払ってから家に帰った。 峻介と同居していたあの家からも、しばらくしたら引っ越さないといけない。化学療法の後は体が衰弱するのを考え、彼女は事前に引っ越し業者を呼んだ。 彼女の一番の親友の福田真澄も来ている。正装でカバンを持ち、ハイヒールを履いている彼女は、手に焼き芋を2つ持ってこちらに歩いてきて、顔には旅の疲れが出ていた。 「やっと苦しみの海から脱出できるね!あたし今日、先月マンションを売った報酬を貰ったの、今夜はパーッと行こうね。心配しないで、いい男はそこら辺に転がってるからさ」遠くから彼女の大声が聞こえてきた。 優子が消えていたこの一週間は、ちょうど彼女は海外に飛んで恋人に会ってきたので、彼女の病気が知らず、てっきり彼女は、開き直って離婚することに決めたと思っていた。 「ダメよ、もしそっちの旦那さんに、ブラックポニークラブに行くなんてバレたら、そっこう飛行機に乗って罪を問いにくるわよ」優子は笑って言った。 「本当勘弁してよね、もう北半球先の愛なんか信じるもんか。今回はサプライズをしてやろうと思ったら、奴があたしが命がけで稼いだ金で、向こうで女を作っていたなんて」 真澄は思い切ってあの男を罵倒していたが、涙の中の苦しみは隠せず、七年の恋は遠距離恋愛によって終わりを告げられた。 優子は慰めようとしたが、自分のめちゃくちゃな結婚を思い出せば、自分も罪のある人間だし、とても人を救う立場ではないことに気づいた。 「あんたのその性格だと、タダでは済まなかったんじゃない?」 真澄は彼女の手を取って庭の花壇に腰を掛け、手の中の焼き芋を一つ彼女に分けた。まるで自分は何事もなかったように食べ始めた。 「どれだけ強い性格の人でも、長年の遠距離恋愛をすりゃ、丸くなるものよ。ずっと前から予感してた。人が誰かを愛する時は千の理由も見つけられるけど、愛しなくなったら一つの理由で足りる」 「前は、彼はバレンタインを一緒に過ご
二人の失恋したばかりの女は二人のイケメン美容師のところに訪ねた。 そのうちの一人は高橋優子を一目見ると、目が輝き、近頃人気な髪形を彼女に勧めた。しかし高橋優子は「短くして。短ければ短いほどいい」と断然と断った。「お姉さん、今流行っているのはクール風なスタイルですけど、俺個人的には、短すぎるとお姉さんのスタイルが限られちゃうから、やっぱり肩まででどうですか?若く見えるし、色んな場面に適しますから」「いい」 「お姉さんの髪の毛は黒くて長いし、きっと何年も伸ばしてるでしょ?全部切ったら勿体ないですよ」美容師は惜しげに首を横に振った。高橋優子は鏡の中の自分を見つめた。この頃はちゃんと休めず体に疲れが溜まっているとはいえ、美しい顔立ちはきれいなままだった。無造作な真っ黒な髪の毛が垂れており、いっそう美しく映っていた。峻介は彼女のロングヘアが好きだと言っていたので、もう何年も伸ばしっぱなしにしていた。美容師がなかなか手をつけられないようだから、「じゃあ、自分で切るね」と彼女は微笑みながら言った。ばっさりと、何のためらいもなく、真っ黒な髪の毛が切り落とされた。まるであの青くて苦い過去に自分をおいて行くようだった。「はい、あとは任せた」 優子はハサミを美容師に返し、スタイリングを任せた。髪を桜色に染めて貰った真澄は優子の新しい髪形をみて、まずはびっくりした表情をしたが、やがてそれがとても美しくみえてきた。「美人であればどんな髪型をしてもきれいって、こういうことだったのね。優ちゃん、あんた本当にクールだわ」優子のその韓流スタイルの髪型に合わせるべく、真澄はすぐさま彼女をショッピングモールに引きずり込み、その中性的な系統の服を何セットか買った。着替えて外を歩くと、かなりの視線を集めた。夜になり、真澄は優子とショーウインドーの前でツーショットを撮り、SNSにアップした。キャプション:生まれ変わり。優子は真澄に付き合ってこれまで高くてなかなか手を出せなかったステーキセットを食べ、「優ちゃん、なんかあたし達、高一の頃みたいだね。十何歳の年はさ、この世界で一番難しい問題は関数の方程式だと思ってた。今思えば、方程式なら法則を使えば解けるじゃない。なのに男はさ、こっちが全身全霊で付き合っても最後は傷だらけになるだけ」優子にとってア
峻介の冷たい目線が森本進に向かってきて、森本は慌てて「社長、奥さんは今福田真澄と一緒にいます」と説明した。福田真澄は高橋優子の親友だから、二人が一緒にいても別におかしくない。当初は高橋優子の動向を把握するため、森本進に彼女のSNSをフォローさせておいた。森本進は説明しながら携帯電話を取り出して、真澄の投稿を開いた。アップされた写真には、真澄の桜色に染めた髪は凄く目立っていたが、峻介は真っ先に真澄の隣の優子を見つけた。普段のスタイルから大きく変わり、腰まで伸ばしていたロングヘアを、耳程の短さまで切って、昔は笑うと太陽みたいに輝いていた彼女は今、幾分と憂鬱な雰囲気が漂っている。写真の中の彼女は、目を垂らし大きめの中性風のシャツのから、デリケートな鎖骨が見え、全体的に禁欲系の美しさが出ていた。キャプションは「生まれ変わり」だった。峻介は携帯電話を握っている手が軽く振るえていることに気づいていない。彼女にまるまる一年足止めにされたが、今彼女の方から手を離した。この状況は自分にとって都合がいいのに、何故心が息が詰まるほど痛いのだろう。いや、自分の妹が地下に眠っているのに、彼女に生まれ変わりなんてさせるものか。それは心の痛みではなく、悔しさだった。苦しみはまだ終わっていない、彼女を逃がすつもりはなかった。峻介は自分の世界に溺れていた。森本進は「福田さんは奥さんをブラックポニークラブに連れていきました」と補足した。彼は次の投稿を開いた。うす暗い中、優子は気持ちよさそうにソファーに座り、爽やかな顔持ちの少年が彼女の口にブドウを運んでいた。彼はこの瞬間、手に持っている携帯電話を握りつぶしかけた。「ブラックポニークラブに行く」 車の中は冷たい空気に満ちている。峻介の頭の中はあの白い服の少年で一杯になっていた。彼は優子が白いシャツを着ている自分に抵抗力はないと分かっていて、優子もたまに白いシャツを着る自分の絵を描いていた。彼はこの瞬間にやっと、自分は離婚したくないと気づいた。それだけではなく、彼女を一生牢屋に捕らえて、毎日苦しく生きながら高橋信也の代わりに罪を償ってもらいたいくらいだった。森本は車の中でじっとしているが、彼らもここ二年峻介が里美の頼みなら何でも聞いてやってはいるけど、彼女との愛情はあまり感じられなかった
福田真澄の酒癖は最悪な部類に入る。高橋優子が止めていなかったら、あの貸し切りルームでホスト達とどんなプレイが繰り出されていたか想像もつかない。少なくとも優子は彼女が男と首を絡めて自分がどれだけ欲求不満かを語る姿は、これまで見たこともなかった。酷く酔っぱらった真澄を見て、優子は自分が借りたばかりのマンションに連れて帰らざるをえなかった。少し前、病院の雇い世話係のおばさんは優子が部屋を探しているのを知って、親戚のマンションを紹介してくれた。不動産屋を経由しない分、金を節約できるほか、そのおばさんが保証人になってくれることもあり、優子はそのマンションを借りることにした。大家さんは帰国したばかりで、二人はまだ契約を交わしていないが、LINEでのやり取りで話がついて、お互い合意してから優子は部屋を片づけ、引っ越してきた。手続きや登録を一切していないため、佐藤峻介はしばらくここを見つけられないだろう。マンションの部屋は狭く、破産前の高橋家どころか、結婚した頃の家にも随分劣るものの、居心地はいいので、優子は気に入っている。父が好きな熱帯魚まで飼い始めた。窓を開ければ海が見える。前はてっきり明海別荘が峻介が用意してくれたプレゼントだと思ってたが、松本里美が帰国してすぐにそこに住み込んだ。それから優子は結構な間、怒りと悲しみで落ち込んでいたが、今はやっと気持ちの整理が出来ている。立派な家でも、そうでない家でも、そこから見える海は皆同じだった。マンションは小さなベランダがあり、優子はそこに厚めの絨毯を敷いた。ももともとは父の状況がもう少し安定したら、彼をここに住ませて、暇な時にベランダで太陽の光を浴びながら残りの人生を過ごしてもらいたかった。しかしそう計画してはいたものの、自分の癌が発見され、父の病気も悪化するとは夢にも思わなかった。酒を数杯飲んだら、胃の調子が悪くなり、優子は薬を飲んでからあの小さな赤ちゃん用のベッドの上で横になった。 彼女は毎晩、身体をこう縮ませてやっと少しの間しか眠れなかった。その夜はアルコールが効いてよく眠れた。目が覚める頃は既に太陽が結構のぼってきていた。真澄は彼女より少し早く起きたので、朝食を作ってくれた。二人は言葉を交わさずとも意思疎通しているかのように、誰も昨夜のはしゃぎを口にしなかった。大人