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第596話 退学

二十分後。

メドリン指導室。

晋太郎がオフィスの前に着いた途端、ゆみの嗚咽が聞こえてきた。

「なぜ私が責められるの?最初に私のことを雑種だって言ったのは彼じゃない!私にはパパがいる。いないわけじゃない!」

「まだ幼いのに喧嘩を知っているなんて、やっぱり父親がいない悪い子だ!私の息子を殴るなんて、今日退学にさせないと許さない!」

会話を聞いて、晋太郎は眉を寄せ、顔色が暗くなった。

彼は大きく一歩を踏み出し、オフィスの前で冷たく言い放った。

「いったい誰が私の娘を退学にしようとしているのか、見てみようじゃないか!」

晋太郎の声に、指導室の全員が一斉に振り返った。

晋太郎を見た彼らの顔には驚きが満ちていた。

ゆみのは目を見開くと、その後すぐに晋太郎のところに駆け寄った。

「パパ!私はパパがいない雑種じゃない、そうじゃない!」

「まだ嘘をつくのか!」

鼻にティッシュを詰めた、太った少年が前に出て言った。

「誰かを連れてきたからって、それがパパだとは限らない!」

晋太郎から放たれる冷たいオーラに、太った少年の母親が慌てて息子の口を手で塞いだ。

彼女は立ち上がり、震える声で晋太郎に言った。

「森川さん。彼女があなたのお子さんだとは知りませんでした」

晋太郎は冷笑した。

「あなたのような低俗な家庭は、メドリンに入学する資格はない」

女性は青ざめた顔で言った。。

「森川さん、私たちの目が節穴でした!どうかお許しください!」

晋太郎は彼女に構わず、涙で赤くなった目をしたゆみを見下ろした。

心が痛みながら、彼はしゃがみ込んでゆみを抱き上げた。

「怖くないよ、パパがいるからね」

ゆみは晋太郎の首にしっかりと抱きつき、嗚咽しながら泣き出した。

「ゆみにはパパがいるの。誰にも必要のない子じゃない」

晋太郎は大きな手でゆみの背中を優しく撫でた。

「うん、パパは知ってるよ」

おそらく、ゆみが彼をパパと認めるのは、この時だけだろう。

晋太郎の胸には複雑な感情が込み上げた。

そう考えながら、彼は目を上げて高飛車な態度の母子を見た。

「伊藤さん?」

女性はごくりと唾を吞んだ。

「森川さん、これは私たちの非です。息子を叱ります!」

「お?」

晋太郎は眉を上げた。

「どのように叱るつもりだ?」

女性は歯を食いしばり、振り返って、太
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